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藤沢育成会 理事長日記 | 最新の日記
街を福祉目線で覗くと

 昨年は「法人設立30周年、活動を始めて半世紀」だったので、1年かけて法人の基本理念である"インクルージョン"を考えた。"街で暮す、地域で生きる"や"それぞれのマイライフ"など、(福)藤沢育成会では"飛び出せ!施設から"のメッセージが込められたフレーズが使われる。昨年実施した利用者、家族、地域の皆さんとの会は"インクル・サマーフェスティバル"。"インクル"はもちろん"インクルージョン"。法人の誕生会だったが、地域の皆様と一緒に花火を見た。会場の藤沢養護学校に「来年もやってくれますか...?」の問い合わせがあったと聞く。地域の皆さんに何かをしていただくだけの時代が終わり、私たちも何かをする、一緒に何かを作り上げる時代となり、それが"インクルージョン藤沢"への道のりだと考えた。だから、もう一度、街を眺めたくなった。

 

 例えば、高座渋谷駅ではホームに社会福祉法人の看板がある。長後駅にも看板がある法人は「藤沢市の方も利用できます」と。一般的には何のことか分からないだろうが、社会福祉法人の事業利用に地域割りはありませんということ。それは選択できるサービスを明記していると受け止められる。一方では看板いっぱいに事業展開が描かれ、地域に開かれた社会福祉サービスを示していた。ホームの看板を見ると医療系の看板が圧倒的で、こんなに病院がある街って相当高齢化しているの...、でも病院や医院が倒産した話は聞かない...、いや、それだけ競争が激しいから看板を出さないといけない...とか。地方では医者不足だと言われている時代...、この地域も小児科や産科は公立病院でも医師不足に悩んでいると聞くが...などと不思議マークが"???..."。そういえば、高度経済成長期は製造業のポスターが多く、商品や商店の看板が並んだが今は違う...。

 

かつては社会福祉法人が看板を出すなど想像出来なかった。日本では"措置"から"契約"の時代に入り、サービスを選べる時代。選ぶためには基準が必要だ。選べなかった時代は、サービスの中身を知らないまま利用した。もちろんバリエーションが足りないとか、サービスの質が問題だなどサービス受給者が発言するのはとても苦しかった。選べるということは、どの味付けだったら買いたいか...ということ。味付けは法人、事業所の特徴を見極めなければ出来ない。車を買う時に車種に止まらず色に悩むことを考えれば、暮らし向きまで変わってしまう障害福祉サービスはもっと選ばれることに努力しなければならない。だが、障害福祉サービスはお買い上げだけが目的だと儲け主義の汚名を着るだろう。何故なら社会サービスだから。社会サービスは購入するサービスが社会生活上の必要十分であって、必要のないものまで売ればいい訳ではない。だから社会的使命や理念が無ければ社会サービスではない。故に華美にならず、サービスが必要な人に、内容や法人特性を伝えることは不可欠だ。これからはふさわしいサービス内容と共に広報が必要。(2016.4②)

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新年度!"措置から契約へ"の真相を見極める

昨年は「法人設立30年」。記念3事業それぞれに特徴が現れ、職員、家族等の活躍、協力で終り深く感謝している。"法人の特徴が出ましたね...""インクルージョン藤沢に魂を入れてくれました!"などの感想をいただき利用者、家族、職員の協働の重要性を再認識した。見て頂いた法人の歴史は"ニーズ(必要)"になる前の"デザイア(願望)"、"ウオンツ(欲しい)"だった。それが今の障害福祉を切り拓いた。だが、現状は制度に充足し、とらわれ、逃れられない傾向にある。制度は必要だから人が作る。時代が変わり暮らしや価値観が変われば今の制度に充足できない。例えば児童福祉法改正時"制度疲労を起こしている!"と言われた。その頃、児童福祉法改正と共に子ども虐待防止対策がスタートし、社会福祉事業法が社会福祉法に改正され第4条に「地域福祉の推進」を明記した。その後、障害福祉は措置制度から支援費制度、障害者自立支援法、障害者総合支援法へと変わった。

 "措置"は"行政処分"。サービスは受給者の意志ではなく社会的必要性に左右された。その頃"私の考えと違う..."と発進したのが当事者運動。藤沢育成会はこれが発祥の原点。だから当初は"あったらいいな...""そうあって欲しいな..."を実現するために"地域作業所"を創った。考えにくいサービスだったが、イノベーション(新機軸、技術革新)した。関係者は目もくれなかったが、次第に主流となり地域福祉を推進した。そこに措置から契約の考えが現れ、利用者主体のサービス形態が誕生。だから"措置から契約へ"は社会からではなく、"個人"から社会生活を考える姿を現す。加えて、措置から契約へは個=利用者から考えるだけではない変化もあった。それが社会福祉法人の運営、経営手法。措置では行政が示した通りの運営、経営を求められたが、契約への移行で一定の裁量が生れ、法人の特徴を示すことが出来るようになった。つまり、個性を発揮して選ばれるサービスを提供する必要が出てきた。例えば、放課後等児童デイサービス。1人で通えても送迎を求める親の強い要望...、長時間サービスが与える影響を考慮しつつどう折り合いをつけるか...など。サービス提供者は社会的役割と療育の狭間でアンビバレントになる。障害福祉のミッションを忘れたサービスは職員がストレスフル。でも、選ばれないサービスは存在しにくい。つまりサービス受給者が"個の尊重"を前提としたサービスにシフトすると共にニードを理解しミッションとの折り合いをつけなければならない。だから事業者がイノベーションしなければならない。故にサービス提供者として"措置から契約へ"を具現化しなければならない。それはニードに止まらず、ウオンツやデザイアを読み解くことから始める必要がある。だから法人30周年は未来へつなげる新たなスタートと考える。(2019.4

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"インクルージョン藤沢"

「当り前にしよう...」がノーマライゼーション。それは「ノーマライゼーションの8原理(注1)」を見れば歴然。①一日のノーマルなリズム、②一週間のノーマルなリズム、③一年間のノーマルなリズムから始まる。これすら出来ない時代があった。ノーマライゼーションの父バンク・ミケルセンが考えついた時に叫んだのは"ゲットーと同じだ!"。ゲットー=アウシュビッツ等の収容所。死の恐怖と戦ったゲットーと同じ...に驚愕。だが、ノーベル賞作家パールバックが我が子の入所先を探す体験談はそれをほうふつとさせた。

朝起きたら顔を洗うなどのリズムは疑う余地がないが、廊下に並んで顔を洗う姿は当り前か...。週末が日々と異なるのは当り前だが普段と変わらぬ日課の入所施設は当り前か...。毎日の変化が少ないのが自閉的傾向の人には分かりやすいというが、本当に365日同じリズムで良いか...。考えれば考えるほど"当り前...って、何?!"となる。だがニィリエは④~⑧まで当り前を並べる。ようやく"当り前の暮らし"が一律なはずがないと思う。すべて同じでは個性がなく誰かがコントロールする暮らしが見え隠れする。だから、ノーマライゼーションは当り前の中に"一人ひとり"という考えがある。ノーマライゼーション=ノーマルな状態は個性を大切にした暮し...。支援員の頃、土曜日に朝寝坊の中学生を起こそうとしたら"土曜日ぐらい寝かせてよ~!"と絶叫。"朝ごはん食べられないぞ~"と言うと"いらないも~ン!"。集団生活はどうしても規則優先になる。しかも命令口調に。障害福祉は入所施設から発展したから命令口調が強い傾向がある。

 "路線バスに乗せろ!"と主張したバスジャック事件(注2)の横田弘氏や入浴拒否事件(注3)の新田絹子氏を思い出す。当り前が当り前になるために発言、行動した人々がいた。"当り前"のために努力した人達がいた。そして、当り前に向かって確実に推し進めて来たのが藤沢育成会。街を歩くと当り前に法人の車がある。街で当り前に声をかけてくれる利用者がいる。でも、本当に当り前か...、どこまでやれば当り前か...、何が"当り前"...。それぞれの当り前に応えるための改善はどこが終点...。法人設立運動を始めた時、親の当り前は学校に行く、家から通勤すること。それは当り前になったが、学校は分離され、行きたくても行けない、行きにくい。学校に行っているけどちょっと違う...。それが選択した結果なら良いが、そうでなければ...。だが、学校の配慮がなければ子どもが苦労...。神奈川県教育委員会は"インクルーシブ教育"を推進し、高校に知的障害児を受け入れる。それがインクルージョン...。それが良い生徒もいるだろう。でも障害は種類、程度、状態等では多様だから"当り前の多様性"が必要。一方で時代が新たな障害を生む。だから、いつまでも"当り前"にならない。だから"インクルージョン藤沢"を目指す。それが障害福祉サービスだから。それが"それぞれのマイライフ"を大切にすることだから。(2019.3

 

 12回にわたって「インクルージョン藤沢」について考えた。まだまだ深く広く考える要素はあるが、小休止してもう一度、街並みから社会福祉の今を考えたい。

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 "居場所"再考!!!

 ベストセラー作家恩田陸が「会社務めをしていた頃、どうしてもまっすぐ家に帰れない日というのがあった。なぜかはひとことでは言えない。とにかく、この気分のまま家に帰りたくない。今感じている空気を家に持ち帰りたくない。そう思う日があるのだ。」と書いていた。違和感なくす~っと入った。長いサラーリーマン勤務で何度もこのような気分になった。理不尽な仕事を命令された時、自分とは考えが違うが実行しなければならなかった時、ピークに達した。そんな時、酒やカラオケ、時に麻雀に興じた。仲間が察して誘ってくれた時も1人の時も。若い頃はそんな空気をもたらしたものが許せなくて感情的になった。そこで二つの課題を見た。"仕事と組織の関係""家に帰りたくない空気の収め方"

 はじめに"仕事と組織"。芸術系のように個人で仕事をするならともかく、組織を構成する仕事は、それぞれの想いや考え、価値観が集合して創り上げるから思い通りにならない。"組織"の意思決定が必要で、組織を無視した動きは自由で楽しげだが、意思決定が不十分なまま始動するので結集した力を生み出しにくい。だから組織としての意思決定手法を確立し実現可能な道のりを求める。多数決でも同数の場合は議長がキャスティングボードを握るように意見集約時の発言力が違う。その分リーダーは重い責任があり人知れず苦しむ。しかし、決定力の弱い人には理不尽に見え、見通しがつきにくい。だから家に帰れない空気を創る。これを職場の何気ない会話が補うが最近は少ない。利用者との距離感は十分に配慮するのにスタッフ同士、上司・部下での距離感が読めずストレスフルになる。単純化すれば分かりやすいというが、人と人との関係はそうはいかない。だから時として上司や部下、同僚とちょっとした会話で距離感を感じたい。もし、そんな空気が難しい職場ならそれを解消するのは上司の務め。何故ならそれが職場内の"居場所"作りだから。

 一方で、"家に帰りたくない空気の収め方"は、そんなストレスフルな状態の解消方法。それが飲み会やカラオケ。これは時代や趣味によって異なるがすべての人に必要だから趣味に興じる時間が重要。ワーカーホリックでは激務に耐えにくい。家族を巻き込めないと思えば"家に帰りたくない日"に...。それが家族にとってありがたいかどうかは別として、何かに追い立てられるようにそんな時間を過ごす。だから利用者も安心できる最良の居場所=自室から出てストレスフルな場で過ごすのだから"家に帰りたくない日"があっても不思議ではない。彼らはどうしているの...。やり過ごす場はあるのか...。仕事帰りに縁側事業に集う知的障害の就労者がいる。これまでこのニーズを見落としていた。多くの人が求めるニーズはサービスの原石。地域支援を具体化できるかも...。これが"居場所再考"。何をどう用意すればニーズに応えられるか...。障害福祉はここまで進化していると考え"居場所最高!"と出来る未来につなげたい。(2019.3

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"イノベーション"でインクルージョン藤沢

千葉大学神里達博教授が「イノベーション政策~政府は主導より対処を」と書いていた。イノベーションは"新機軸"だから新しい軸でインクルージョン藤沢を実現と考えた。イノベーションはオーストリアの経済学者・シュンペーターが20世紀前半に提起し日本では「技術革新」と訳されている。だが、本来の意味はもっと幅広の概念だそうだ。例えばフィルムカメラからデジタルカメラ、そしてスマホの変化を言うそうで、「新しい財貨の生産」「原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得」「新しい組織の実現」等の産業を支えるシステムや基盤の変革にも及ぶ概念だという。それが"モノやコトの価値ある「新しい結びつき方」=新機軸=イノベーション。

 "フィルムカメラからデジタルカメラ、そしてスマホ"を社会福祉に置き換えると"施設福祉から在宅福祉、そして地域福祉へ"と思った。しかもデジタルカメラからスマホの移行は非常に短く在宅福祉から地域福祉へ移行する時の短さと同じ。デジタル化された技術の延長線上だからアイディア次第で簡単に移行したのと同様、在宅は地域にあるから在宅福祉から地域福祉への移行は短時間で出来た。新機軸が現れるまでに時間がかかるがその後は速い。ワットが蒸気のエネルギーを発見すると火力を生み出す原材料がマキから石炭、そして石油に変化し、例えば再生可能エネルギーや深海から採掘可能な新エネルギーなど次々に進化する。また「新しい財貨の生産」は、社会からの目線の価値観ではなく、個人の尊厳を重視できる"新しいサービス提供方法の開発"であり、「原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得」は、丸ごと支援の施設福祉から"障害当事者の選択による必要十分条件を満たしたサービス"。だから従来の考え方や実施体制ではなく「新しい組織の実現」により、新たな軸を構築したサービス提供が出来るようにイノベーションしなければならない。経済学の視点だが、社会福祉は"措置から契約"の時代だから必要十分条件を満たす実施体制を構築するのと同じ。その時のミッションは"インクルージョン藤沢"。

 文末、「行政の本来の仕事は、イノベーションを加速することよりも、その結果起こるさまざまな社会経済的な歪みに対処することではないか」とあった。スマホに至るまでのプロセスでも判るが、新たな世界を作り出す時は、出来ない人や分ってもついていけない人が問題とならないようにすること。それは地域福祉では充足出来ない障害者への配慮と受け止めた。例えば医療行為が必要な障害者のニーズを満たすには、行政が制度改正を図らなければ一法人で行うのは極めて厳しい。だが残念ながら、制度はいまだに長期滞在型入所施設が機軸。だから、地域福祉の時代の今も経営的には従来のままが良い。だが、社会は確実に変化し、従来の機軸に留まれば体質の古さを露呈する。だから、新機軸=イノベーションを求めて前に向かわなければならない。2019.2

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