Mさんは、私以上に体重があり、歩行が困難で普段は車椅子の方です。
当時30代半ばでパワー・スタミナは人一倍自信のあった私は、階段の段差等がある時など、Mさんをおぶっていました。その時もいつものように背負おうとしたのですが、バランスを崩し、2人とも床に体を打ちつけてしまいました。ところが、Mさんは、謝る私の背中に回り込んで、「もう一度おぶって」という仕草をされたのです。私だったら、こんな痛い思いをさせられて二度と嫌だと思うでしょうし、Mさんは依頼心が強いという見方もあるかもしれません。しかし、「もう一度、チャンスをあげるわ。今度はしっかりね・・・」と目で語りかけてこられるMさんに、「こんな自分も許され、生かされていること」を痛感しましたし、Mさんの目の輝きは、今も脳裏に焼き付いています。
Oさんはいろいろ事情があり、横浜で保護されて、うちの施設を一時的に利用された方でした。
不遇な家庭環境だったのに素直な方で、将来牧場で働きたいという希望を持たれていて、「牛を見に行きたい」というご希望を聞き、利用者日課の散歩で牛小屋を通るコースがあるので、私と二人で見に行こうとしました。しかし、極度の方向音痴の私は、何度か行ったにも関わらず、牛小屋にたどり着けないどころか、私の休憩時間切れのため引き返した帰り道さえ迷ってしまいました(どこに行くのも、いつも道は人任せで、先頭を歩いたことがないのです)。相手が女房だったら、「また迷ったの!何回行ったら覚えるの!」と言われ、それに対して私が「方向音痴なんやから、しゃーないやろ!」と開き直って、喧嘩になってしまうところです。でもOさんは、謝る私に対して、「今は運悪く道行く人はいないけれど、迷えば聞けばいいんですよ。聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥って言うでしょ・・・。迷うことや失敗することは、恥ずかしいことではないですよ」と言われたのです。「何て頼りない職員だろう・・・」と思うどころか、この時もOさんに、人を許し生かす力があることを感じ、この言葉もはっきり脳裏に焼き付いています。
前回の施設長日記で、特例子会社の方の講演について書かせて頂き、未だに、利用者の方々と関わってきて感動したエピソードを1時間も話せないですが、今も心に残るエピソードを紹介させて頂きました。
▼本文とは関係ありませんが、我が家のパピ(ミニ兎)とクリ(犬)、ガラス越しです。
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