〇相談事業所「ふらっと」でのある日の出来事
相談支援プラザ「ふらっと」には、介護保険の介護支援専門員を配置した居宅介護支援事業があります。
この部署では、毎日担当の介護支援専門員が行った相談の状況を業務日報としてまとめています。業務日報を読ませてもらうと、私が相談の仕事をしていた頃のご利用者の名前を今でも目にします。
6月のある日、業務日報に記載されている利用者の方の様子を青木ケアマネと話していた際、かつて私が担当していたNさんが趣味で行っている書道が藤沢市の市民ギャラリー書道展に展示されていることが話題になりました。6月4日に書道展に行って、Nさんの作品を拝見しました。
Nさんは、現在79歳、奥様と二人暮らしをしています。今でもとてもご夫婦仲は良いです。奥様はNさんの介護をほとんど一人で行っています。
Nさんは、今から19年前に単身赴任先から冬休みに帰省の際、自宅で脳出血を起こし、左上下肢に重い麻痺が後遺症で残り、車いすの生活を送っています。体が左に傾くので、車いすでの長時間の座位も難しい状態です。左目の視力もだいぶ低下していると聞きます。
書道を趣味として始めたのは知っていました。書道はかなりの集中力が要ります。現在のNさんの身体の状態で、よくこんな大作を書き上げることが出来たな...。大作を見て、ありきたりですが、人間って日々進化することNさんの人間力を大きさ感じました。
写真の展示された書は、
漢文「送劉判官赴磧西」唐詩(劉判官の磧西の赴く送る) 七言絶句岑参(しんじん)の
「火山五月行人少看君馬去疾如鳥」(火山 五月 行人少なり 看る君が馬 去りて疾きこと鳥の如くなるを)です。
〇Nさんとのエピソード
Nさんとは、私が湘南ゆうき村で相談の仕事をしていた平成7年の頃、Nさんの奥様から相談を受けたのが出会うことになったきっかけです。
長期入院後Nさんは自宅に戻りましたが、奥様の介護負担の軽減とNさんの昼間の活動、リハビリを兼ねた生きがいの場所、入浴支援の場として、デイサービスを希望されていました。デイサービス利用に向けて、通院に同行して状態や病院でのリハビリの様子の確認、在宅での生活の確認など行いました。
当時、奥様はNさんが自宅で生活が送れるように様々な住宅改修等の準備を退院前に行っていました。介護ベットの購入はもとより、自宅内車いすで移動できるよう玄関の上り框の段差解消の自動昇降機の設置。自宅内の手すりの設置、トイレの改修。また、通院がスムーズに出来るよう、車のシートが自動で動き、乗降がし易い自動車を購入したり(今ではどの車にも装備できるウェルキャブ)、今では結構スタンダードになっている在宅支援の方策を19年前も昔にすでに実践されていました。奥様のNさんへの想いは頭が下がりました。
また、Nさんと奥様からは「衣類の着脱の介助・入浴介助・トイレ介助・食事介助・車椅子からの移乗など」介護の技術、関わりを実践を通じて教えてもらいました。(余談ですが...毎回のデイサービスの利用時にお互いのパンツを見せ合って自慢し合うこともありました。)
今でも、Nさんと奥様は私にととって介護・相談の師匠です。
Nさんとの思い出を通じて改めて思ったことは、支援あり方や介護の技術を教えてもらった師匠(利用者の方々)が、Nさんを含めて何人居たことを改めて振り返ることが出来まし た。
新年度も3カ月が過ぎようとしています。支援のあり方・技法など色々と本や講義から多く学ぶこともありますが、この仕事をするうえで「師匠・先生」と思える利用者の方と出会えると、この仕事の醍醐味を感じることが出来るかもです。(日々感謝)
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