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理事長日記
「応援の力」
近年、スポーツの種類が広がりを見せ、若者が活躍する姿を目にすることが多くなりました。昨年行われたパリオリンピックのブレイキンやスポーツクライミング、スケートボードなどでは日本の選手が活躍する姿が見られ、その度に若い選手がインタビューなどで口にする言葉は今まで支えてきてくれた親や指導者への感謝とその場で応援してくれた観客への感謝の言葉でした。その時は「今の若者は何か皆、同じようなことを言うなあ」と言う思いで見ていました。
バレーボールやバスケットボールのリーグ戦などを見ていても試合終了後に活躍した選手のインタビューがあり、必ずと言っていいほどファンへの感謝の言葉があり、その時もリップサービスの常套句だなと思ってちょっと冷めた思いで聞いていました。
しかし、そんな自分の思いが変わった時がありました。それはスポーツの場面ではなく、「法人の中長期計画(インクルージョンプラン)」について外部の専門家の方々から意見をいただいていた時でした。皆さん真剣に藤沢育成会の事を考えてくださり様々な観点から意見をいただきました。それは、法人内部ではなかなか出難い視野の広い内容でした。こんなに藤沢育成会、強いては障害者福祉の事を考えてくれている人達がいると思うと大変心強く、同時に「応援の力」と言うのを実感した瞬間でもありました。
以上
(2025.3.1 理事長 倉重達也)
「多様化」
あるファミリーレストランで食事をした時のことです。お手洗いに行く途中の掲示板に黄色で大き目のサイズで目立つように1枚のポスターが張られているのに気が付きました。
ポスターには、
「従業員の身だしなみの多様化を始めました。」
とあり、その下にイラスト入りで
「髪色自由!」
「ピアスOK!」
「ヘアネットなしOK!(パーマOK)」
と書いてありました。
このポスターをご覧になった方も多いと思います。本来ならば「規則を変更しました。」とでも書くところなのでしょうが、従業員向けのポスターではなくお客様向けに掲示されたものですので「多様化」と言う言葉を選んだのでしょう。
「多様化」と言う言葉の使い方が「身だしなみ」に対して使われることが適切であるかどうかと言う問題はあるかも知れませんが、今までと違った言葉の使い方をすることによって目には見えない風習や規則を変えていく原動力になると言う側面があるのだと思います。
このポスターには担当者の働き手の変化に対応しようとする気持ちや顧客が持っている固定観念を変えようとする苦心の跡が伺えてとても興味深いものでした。
少し飛躍して考えてみれば、総合支援法の基本理念である「・・・障害者及び障害児にとって日常生活または社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものの除去に資することを・・・」を進めていく上での大きなヒントになるのではないかと思います。
以上
(2025.2.1 理事長 倉重達也)
「巳年」
新年あけましておめでとうございます。本年も皆様方にとりまして良い年になりますよう心よりお祈り申し上げます。
さて、今年の干支は巳年です。どんな意味があるのかと少し調べてみると巳年は十二支の6番目で、蛇のことを指し、蛇は脱皮することから「再生と復活」「成長」を象徴しているとのことです。
蛇は古い皮を破って脱皮するのですが、人間の場合にも脱皮と同じようなものがあるのでしょうか。思春期に起こる様々な変化がそれにあたるかもしれませんが、人間は社会的な動物でもあります。それに関連して思いつくものは成人式などの儀式です。入園式、入学式もそれに相当するでしょう。社会人になる時の入社式、長いサラリーマン生活では昇格・昇進なども古い皮を破って新たな役割を担った人としての再生を期待されている大事な儀式かも知れません。
蛇が皮を破るのはそれまでの古い皮があるからです。人間の場合もただ、儀式だけをしていてもそれまでの習慣や考え、行動から抜け出すと言う自覚がないことには成長には結びつかないでしょう。
今の時代は「成長」「再生と復活」と言っても若い人にはあまり訴える力がないかも知れませんが人間が生きていく上でいろいろな形で脱皮を繰り返していることを考えることは今年の干支にちなんだ良いテーマだと思います。
以上
2025.1.1 理事長 倉重達也
「おじゃまします」
もう一か月ほど前の法人内の会議で、グループホームの担当所長から「『おじゃまします』と言う感覚が大事なのです」との発言がありました。
藤沢育成会が3年前に作ったバス・トイレ・キッチン付きの独立したワンルームタイプのグループホームでは、そこに職員が支援に入る時には自然に「おじゃまします」と言う言葉が出てくるのだと言います。
ある意味で当たり前の話ではありますが、私にとっては衝撃的な言葉であったとともに目から鱗が落ちるような気がしました。
入所施設であっても自然にそう言う言葉が出てくるような建物の作り方はできないものでしょうか。そんな思いも広がってきます。
日本財団が建築と福祉のコラボレーションに多額の助成金を出すという発想の元にも、従来、福祉業界が優しさや、寄り添う気持ちと言うソフト面にのみ目が行っていたところに建築と言うハード面から考えて行くことも重要だということに気が付いたからではないでしょうか。少し大げさに言えば人が暮らすにはやはりインフラが相当な程度に大事な要素になるという事でしょう。
一昔前の私の子どもの頃は親子が川の字になって寝たりとか、向こう三軒両隣の親しくしている家は挨拶もそこそこに家に上がり込んだりという光景が自然と見られ、その事がたとえ貧しくとも心は豊かに暮らしていますと言う象徴でもありました。それが個人の意識の高まりとともに玄関の施錠だけでなく、部屋の一つ一つにも鍵を掛けられるような建物に変わってきました。
プライバシーを守ると言う啓発活動も大切ですがハード面からの整備も同時に考えて行くことがそれに劣らず重要であるという事を思い知らされた「おじゃまします」の一言でした。
以上
2024.12.1 理事長 倉重達也
「物思う秋」
10月になっても真夏日が続いて、暑い、暑いと言っていたら、急に肌寒くなりました。この頃は秋が無くなって夏からすぐに冬になってしまうと言う話をたびたび聞くようになりました。
「物思う秋」と言う言葉があります。秋は実りの秋でもありますので収穫したものを長い冬に備えるため考えることが多くあったのかも知れません。春の田植えから一生懸命働いてきてやっと刈入れが済み、ホッと一息ついて今年の作物の出来について考えたり、一年間に起こった様々な出来事について物思いに耽ったりすることが多くなったのでしょう。それよりも単純に日が短くなり夜を過ごす時間が長くなったと考えるのが自然かも知れません。
「人生の秋に」と言う題名の本があります。今から55年前に出版されました。その中に次のような詩があります。抜粋ですがご紹介したいと思います。
「最上のわざ」
この世の最上のわざは何?
楽しい心で年をとり、
働きたいけれども休み、
しゃべりたいけれども黙り
(略)
人のために働くよりも、けんきょに人の世話になり、
弱って、もはや人のために役だたずとも、親切で柔和であること
(略)
おのれをこの世につなぐくさりを少しずつはずしていくのは、真にえらい仕事--。
こうして何もできなくなれば、それをけんそんに承諾するのだ。
神は最後にいちばんよい仕事を残してくださる。それは祈りだ
(略)
ヘルマン・ホイヴェルス著(春秋社)
個人的な事ですが44年ぶりに学生時代の友人から電話がありました。同窓会を企画しているので是非会いましょうと言うお誘いです。そんな電話が掛かってくるのも、皆、第一線の仕事から身を引いて自分の辿ってきた道を振り返る「人生の秋に」ふさわしい年齢に近づいたからだと思います。
以上
2024.11.1 理事長 倉重達也
「職員への感謝」
先日の能登半島豪雨の被災者の皆様には心よりお見舞い申し上げます。
さて、9月にある事業所の家族懇談会に出席した時に、まだ利用して間もないご家族のお一人から「職員の方が、小さなことでもうちの子に寄り添った支援をしてくれている。とてもありがたいと思う」と言うお話をいただきました。
また、別の事業所のお祭りに行った時は、短期入所を利用しているご家族から、「些細な体調の変化にも確認の電話をもらったりする。電話が来るとドキッとするが、そこまでうちの子を気遣ってくれているのかと思うと職員さんの大変さが伝わってくる。本当に皆さん良くやっていますね」とねぎらいの言葉をかけてもらいました。
利用者に寄り添った支援は、ご家族が法人を作ったという藤沢育成会の良き伝統の一つだと思います。それを藤沢育成会の成り立ちを知らない複数のご家族から相次いで聞くことができたことをとても嬉しく思いました。
現場で苦労している職員の皆さんに感謝したいと思うと同時に、これからも利用者ひとり一人に寄り添いながら、それぞれの可能性を引き出せる支援を目指していきたいと改めて感じたこの一か月でした。
以上
2024.10.1 理事長 倉重達也