日記

「居住の自由」

 一昨年の秋に障害者権利条約に対する国連障害者権利委員会の勧告が出てから国も業界団体もその問題の解消に本気に取組む姿勢が伺えます。令和6年度の報酬改定の内容もそうですし、関東地区知的障害者福祉協会が主催する研修会の開催要項を見てもそのことを強く感じます。

 国はすべての施設入所者に対して、地域生活の移行に関する意向を確認することを義務化しました。今は自由な契約に基づいて施設入所支援のサービスを受けているとはいえ、本人の意思が反映されているとは言えません。昨年暮れに入所施設の家族会でその話をした際には「本人だけでなく私たちも望んでいたわけではありません」と正直な意見が出たことを私たち事業者は真摯に受け止めなければいけないと思います。理念と現実の溝を埋める作業が私たち現場を預かる者の使命と言って良いでしょう。

 さて、意向を確認した後はどうなるのでしょう?その前にどういう意向が出てくるのかを考えると想像がつきません。

 自分自身に置き換えてみても、もう既に高齢者の部類に入った身にとっては、老人ホームに入るか、このまま在宅で最期を迎えるか問われたら悩み惑うばかりでしょう。

 また、居住の事を考えるには財政的なことを抜きには考えられません。今の障害年金の水準ではグループホームの生活は親の持ち出しか公的な補助がなければ無理です。在宅を望めば入浴や排せつなど様々な支援が必要になって来ます。ヘルパー不足は深刻な問題です。

 今は初めの一歩を踏み出したばかりなので理念先行になるのはやむを得ないとしてもこれから解決していかなければいけない問題が山ほどあります。

 一日でも早く入所施設の利用者が日本国民として同年齢の人と遜色ない暮らしができるように力を尽くしていきたいと思います。

以上

(参照)

憲法 第二十二条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。

 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。

2024.6.1 倉重達也