日記

「おじゃまします」

 もう一か月ほど前の法人内の会議で、グループホームの担当所長から「『おじゃまします』と言う感覚が大事なのです」との発言がありました。

 藤沢育成会が3年前に作ったバス・トイレ・キッチン付きの独立したワンルームタイプのグループホームでは、そこに職員が支援に入る時には自然に「おじゃまします」と言う言葉が出てくるのだと言います。

 ある意味で当たり前の話ではありますが、私にとっては衝撃的な言葉であったとともに目から鱗が落ちるような気がしました。

 入所施設であっても自然にそう言う言葉が出てくるような建物の作り方はできないものでしょうか。そんな思いも広がってきます。

日本財団が建築と福祉のコラボレーションに多額の助成金を出すという発想の元にも、従来、福祉業界が優しさや、寄り添う気持ちと言うソフト面にのみ目が行っていたところに建築と言うハード面から考えて行くことも重要だということに気が付いたからではないでしょうか。少し大げさに言えば人が暮らすにはやはりインフラが相当な程度に大事な要素になるという事でしょう。

 一昔前の私の子どもの頃は親子が川の字になって寝たりとか、向こう三軒両隣の親しくしている家は挨拶もそこそこに家に上がり込んだりという光景が自然と見られ、その事がたとえ貧しくとも心は豊かに暮らしていますと言う象徴でもありました。それが個人の意識の高まりとともに玄関の施錠だけでなく、部屋の一つ一つにも鍵を掛けられるような建物に変わってきました。

 プライバシーを守ると言う啓発活動も大切ですがハード面からの整備も同時に考えて行くことがそれに劣らず重要であるという事を思い知らされた「おじゃまします」の一言でした。

以上

2024.12.1 理事長 倉重達也