日記

『よもや よもやだ!』(みらい社 課長 大澤健二)

みらい社

先日、ご高齢の男性を保護した。

その男性は、坂道のガードレールを伝いながら登っていた。

「●●時25分(たしか)、靴は履いている」と判断が迷う。

「外気温2度でジャンバー着ていない...」「散歩ではないな」。

近くの駐車場で方向転換。片側一車線の国道で、この時間でも車の量は多い。

私:「おじいさん、どこ行くの?」

じいさん:「もう歩けない」

私:「おじいさんさ、どこ行くのよ?」

じいさん:「ちょっと休むから、そこに座る」

私:「座る場所ないから、(壁)ここにつかまって」

おじいさんが壁につかまっている間に、警察へ連絡。

私:「高齢の男性を保護したので、パトカーで来て下さい。」

交換手:「住所はどの辺ですか?何歳ぐらいですか?」

私:「住所はわかりませんが、○○の交差点を△△方面に向かう途中の、タイヤショップがあって居酒屋があってバイク屋がある当たりの反対側歩道です。年齢はたぶん、80代後半だと思います。」

交換手:「わかりました。付近にいる警官を向かわせます。」

男性は長袖のシャツしか着ていなかった。

車からブランケットを出し、男性の肩を包んで上からジャンバーを掛け、歩道の生垣に座らせてもらいパトカーが来るのを待つ。

56分位して、2台のバイクで警官が到着。

パトカーではなかったが、早い到着で良かった。

警官①は若手で20代後半前、警官②は30代半ばくらいなのだろう。二人とも声も肌も若い感じがするが、明らかに警官②は先輩か上司なんだろう。

警官は、男性に色々質問するが、質問と答えは一致しない。当然だろう。

警官に家を聞かれた男性は、家を案内する事になってしまった。

「大丈夫かなぁ・・・」

男性に両手を前にしてもらい、私が両手で手を引く姿勢で移動する。男性はこの移動方法に慣れている様子で、腕への力の入れ具合は丁度良かった。

今まで保護してきた時の警官達の対応は、まずパトカーに乗せ2人のうち一人の警官が所在不明者の届がないかを署に問い合わせ、もう一人は要保護者の対応にあたるという連携。今回は様子が違う。

「そこが家だよ」「あれ、玄関がなくなっている」と、男性の言葉に合わせ「おじいさんこっち?こっちじゃないみたいだから、どこなの?」

「こっちだったけな」男性は案内を続ける。警察官はその通り家を探す。

15分位歩き、男性がいよいよ歩けなくなりマンションのエントランスに座り込んだ。

警官①:「おじいさん、ここは入口だからこんな所に座っちゃだめだよ。」

私:「おじいさん、ここ(エントランスの生垣)に座りましょうか」

警官②:「後は我々で対応しますので、お引き取りいただいて大丈夫ですよ。」

私:「ブランケットとジャンバーは、私の物をかけているんですが」

警官②:「持ち帰っていただいて大丈夫ですよ」

私:「いやいや、それじゃあ寒いでしょう」

警官②:「後はこちらに任せて大丈夫ですから、ありがとうございました。」

私:「たぶんトイレにしばらく行ってないと思うので対応して下さいね。よろしくお願いします。」

きっと大丈夫。

二人の警察官に後は任せ、その場を離れた。

「じいさん、大丈夫かなぁ。鼻水でてたしなぁ。」

心配ともやもや感の残る帰路。

われわれ福祉関係者は、対人援助職として、利用者、ご家族に『安心だね』や『大丈夫だね』を少しでも多く感じてもらえるような支援をしたいものだと思いました。

この記事を書いた人

大澤 健二

北の国からの黒板五郎にあこがれて20年。外見はクールに見えて、実は熱すぎる情熱の持ち主。障害福祉にとどまらず、児童養護施設や重心施設、そして八百屋さんまでと異色の経歴の持ち主。