日記
サービスセンターぱる/副所長 波多江努)
数か月前、墨・筆・紙で表現する作家さんとゆっくり話す機会がありました。
その作家さんは、言葉では表現できない気持ちを何かにぶつけたいという想いで、表現方法を探していたそうです。ある時、絵画教室での活動を通じ、墨が紙に滲んでいく瞬間に心が動いたのだそうです。また、墨にはコントロールできない予期せぬ滲みに魅力があり、自分と材料の反応で作品が完成していくときの快感と不満とワクワク感など、様々な経験と感情を話してくれました。
一方、作家・アーティスト・職人という響きに強いあこがれを持っている私のモノづくりは、付加価値をつけたがるのです。モノづくりとモノがたり(福祉論④参照)だとか、完成したモノを必ず写真に収めておくとか。作っている過程に意味を持たせようとしたり、承認欲求があるような気がするのです。つまりは邪念が多すぎる...。
そして、すべてをなげうって作品を作り、犠牲を考えずにひたすら作り続ける「狂気じみた覚悟」と「異常なまでに純粋な創作衝動」のスケールが圧倒的に違いすぎるのです。
私のモノづくり観を覆してくれた彼との話は、この上ない喜びでした。すべてをなげうって作品をつくる作家・アーティスト・職人のような覚悟は芽生えませんでしたが、純粋にモノづくりを楽しむという原点を改めて教えてもらえました。
この記事を書いた人
波多江 努
モノづくりの類まれなる能力の持ち主。装飾品制作から派生して、革細工の世界へ。生来の凝り性な性格から、いつからか革細工の技術はプロ顔負けの腕前に…!家族とメタリカを愛する、心優しきパパ。