日記
一生モノの宝物 ( 相談支援プラザ / 課長 一戸香織)
何気ない日常は当たり前ではない...と感じる日々が続いています。
2022年春...
4月に入り、暖かな陽射しを浴びながら今年も変わらずに桜が咲いています。
この季節になると、
九州から引っ越して来られた方とお会いした時の話をふと思い出します。
その方は、
80年住み慣れた地を離れ、娘が近くに住むこの藤沢市に住む事を決めました。
「モノは持って行けないから最小限にね」と娘から言われ、言葉ではわかっていても、しばらくの間、ずっとモノが捨てられずにいました。
何度も何度も「持って来ても置く場所がないから、処分して来てね」と念を押されても、荷物整理は一向に中々進みませんでした。
とうとう、引っ越しの寸前に「こんなモノは捨てて」と終始娘に言われて、ようやくモノが減ったそうです。
元々住んでいた九州のお家の敷地には、桜の木が数本あり、廊下の戸を全て開けて近所の方とお花見をした思い出話を聞きました。敷地の広い、大きな家で生活していたのです。
引っ越し先のアパートの室内で、一つとても気になるモノがありました。
それは、玄関から部屋に通じる廊下のど真ん中に、ドンッと置いてある火鉢です。両手で抱える位の大きさのとても一人では持てそうにない位に重そうで、瑠璃色の鮮やかで綺麗な色でした。
ある日、私から「この火鉢は、玄関から出入りする時に、つまずいて転んだら大変なので、もう少し移動すると良いですね」と話しました。
その言葉から、いろいろ話して下さいました。
「娘からは、『絶対に(九州から)持って来たらダメ、必要ない』と言われたけど、
頼み込んで、持って来たモノなのよ」
「原爆の時に、全て焼けてしまった中から、一つだけ焼けずに残っていたのが、
この火鉢だったの」
「これだけは一生モノの宝物として、藤沢まで一緒に引っ越して連れて来たかったの」
私は、つまずいて転んだら骨折して、打ちところが悪いと大怪我に繋がると思い、火鉢を移動しましょうと話した...つまり火鉢は重たくて邪魔なモノと考えて、その方に伝えてしまったのです。ご本人の火鉢への思いを知っていたならば、もう少し違う言い方、伝え方をすれば良かったと思いました。
でもその方は即座に、「そうね、もう少し動かさないと転んだら困るからね」と言葉を返してくれました。
一生モノの宝物と言われた時に
みなさんはどんな宝物を思いますか?モノ、言葉、気持ち。
私にはあるだろうか、一生モノの宝物
~天神公園~
地域の方々が参加して公園体操をしています。
この記事を書いた人
お米の産地で生まれ育ち、ご飯が大好き!おにぎりでお米の違いが分かります。微妙な力加減で、ふっくらとしたおにぎりを作れる事が密かな自慢。
具は大好きな梅干し!