日記

「帰省」 ( 湘南セシリア・みらい社 / 課長 鈴木 保志 )

みらい社
湘南セシリア

先日、父の葬儀で帰省をした。久しぶりに会った兄弟で、懐かしむように田舎道を歩いていたところ、弟が「あ、カミキリムシ。」と道端の死骸に気づき、すかさず兄が「20円か。」とつぶやく。地域限定の会話に思わず皆が笑う。

かみきり虫にもさまざま種類はあるだろうが、いつも目にしていたのは黒を基調として白い斑点の身体に、黒と白のカラフルで長い触覚、カミキリムシの由縁であろう口など、今考えるととてもグロテスクな、いわゆる害虫である。子どもの頃は「キーキー虫」と呼んでいたが、おそらくキーキーと鳴いているからだと思う。ミカン畑農家には悩みの種となる虫であるが、思い出深い虫でもある。

子どもの頃、一定期間だったと記憶しているが、その虫の両羽を駄菓子屋にもっていくと、20円と交換してくれる仕組みがあった。みかん畑に囲まれた環境で過ごしているため、探す手間もない。クワガタやカブトムシのようなありがたみはないが、学校が終わると一目散に宝の虫を目指したものである。近隣のおじさんは袋に羽をためこみ、シャカシャカと振って見せ嬉しそうに手渡してくれたものだ。農家にも子どもにもありがたい、地域性に富んだ仕組みである。

いつの間にか進学のため上京していなくなった姪や甥、そして父の死、否が応にも時間の経過を感じざるを得ない帰省となった。

毎年欠かさなかった「父の日」、最後のプレゼントを送ろうと思った。

この記事を書いた人

鈴木 保志

自宅にグランドピアノを設置している法人内随一のピアニスト♪仕事の疲れやストレスを旋律に乗せて‥‥♪…と言いたいところですが、もっぱらお酒に走ってしまう、反省の日々です。