日記

湘南ゆうき村の施設長・課長日記

骨髄提供体験記①(湘南ゆうき村・法人事務局 課長 高橋宏明)

法人事務局
湘南ゆうき村

8月某日、骨髄ドナーとなり骨髄を提供しました。

日本骨髄バンクの通知から術後までの体験について綴ります。

4月【通知】

新年度まもない4月上旬、1件のショートメールを受信した。

通常、ショートメールは、留守番電話のお知らせか迷惑メールがメイン。

今回も期待せずにタイトルを見ると、『日本骨髄バンクからのお知らせ』

たしかに以前、骨髄ドナーに登録したが、これまでは定期的に郵送で冊子が届くのみ。

「詐欺メールも凝ってきたな」なんて疑いながら、ショートメールを開く。

『あなたと患者さんのHLA(ヒト白血球抗原)が一致し (中略) 詳細は・・』

とメールの一番下に記載されたURLへ誘導するような文章。

いよいよ怪しさが増したが登録されていない番号だったため、いつものようにアクションする前にネット検索。

番号は【日本骨髄バンク】

妻にも相談し、URLを開くと、問診票のようになっており、現在の健康状態を細かく打ち込む。

3日後、未登録の携帯電話から着信。

「初めまして、日本骨髄バンクのコーディネーターをしております○○と申します」

提供の意思確認があり、その後、確認検査の日程について確認される。

この時点でもまだ疑心暗鬼だったが、職場近くの病院で予約。

確認検査とは、患者さんと白血球の型があっているか再確認し、骨髄提供できる健康状態かを診る検査。

検査は平日のみとの指定があり、いよいよ仕事に影響が出てきそうなので施設長へ相談。

5月【確認検査】

ゴールデンウイーク明けに、確認検査の為、指定された病院へ。

コーディネーターや医師と面会し、ここで初めて詐欺ではないと実感。

そもそも白血球の型が合うのは、兄弟姉妹で4人に1人、それ以外では数百人から数万人に1人らしい。

2時間程度かけて、血液検査や骨髄提供の方法、リスク等の説明を受ける。

翌週、確認検査の結果が郵送で送られ、骨髄提供できる健康状態との通知。

ただ、この段階では、最大10名ほど白血球の型が一致したドナー候補者がおり、その中から6週間以内に、最終候補者が決まるらしい。

患者さんの体調により、コーディネートが終了する場合があるとの事で心配していたが、6月下旬にコーディネーターから電話で「最終候補者となりました。」との連絡があった。

献血に行ったときに偶然勧められた骨髄登録から、最終候補者へ選出されましたが、長くなってしまうので次回、最終候補者決定からの動きについて書きたいと思います。

※写真は骨髄採取手術退院後に帰省した山形の桃パフェ

「湘南だいちの10年、湘南ゆうき村の30年」(湘南だいち・湘南ゆうき村 施設長 妹尾 貢)

湘南だいち
湘南ゆうき村

 先日、湘南だいちの秋祭りが開催され、大勢の皆さんにお越しいただきました。地域の皆様にもご協力いただき、無事に終了することができました。昨年まで、夏祭りという名称で7月後半の炎天下で実施してきましたが、近年の異常な暑さで、もはやお祭りどころではなく、今年度からは9月末に実施時期を変更したのですが、それでも当日は35度近い気温まで上がり、涼しい場所を探しながら参加されていました。

 また、今年度は江の島片瀬漁協のマルシェの実行委員の方や、西俣野下自治会の役員の方にもご参加いただき、盛り上げていただきました。

 今年度は湘南だいち設立から10周年、湘南ゆうき村はもうすぐ30年ということもあり、これまでを振り返ることが多くあります。これまで自分が配属になった事業所やそこでの利用者や職員のことを、いろいろと思い出します。

 一緒に働いた職員の中には、現在は別な職場に変わった人もいますが、みなさんそれぞれの現場で活躍されています。行政の職員になった方や、別の業界で活躍されている人もいます。

 サービスを提供する側から、福祉制度を作る側の仕事に変わった方もいましたが、このような人たちと一緒に仕事ができたおかげで、福祉のサービスというものが、どうやって充実・発展していくのか、ということを知ることができました。

 

 法人内に限らず、この仕事のプロフェッショナルだな、と思う人との出会いがたくさんありましたが、その共通点は、瞬発力と持久力の両方を兼ね備えていること、そして、いつも現状に満足することなく、アンテナをはって勉強し、日々進化しているということです。

 

 そのような人たちと一緒に働けていることは自分の財産であると同時に、障害福祉を支える様々な部門に仲間がいるという安心感にもつながっています。

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 10月26日(土) 「湘南ゆうき村 収穫祭」を開催いたします。ぜひ、ご来場ください。

 

※トップ画像はゆうき村がある西俣野の田んぼです。湘南だいちの秋祭りが行われたころ、地域の皆さんは稲刈りで大忙しでした。稲を刈った後に飛び出してくる生き物を狙っているのか、トンビが急降下を繰り返していました)

オムライス(湘南ゆうき村・法人事務局 課長 高橋宏明)

法人事務局
湘南ゆうき村

10年前、同僚に『伝え方が9割』という本をもらい驚いた。

もらう前日に同じ本を自分で購入していたからだ。

当時、書名に『人は〇〇が9割』などと書かれた『9割本』が流行っていた。

月並みな言葉ではあるが、伝え方は重要で大切だ。

しかし、捉え方は相手の状態によっても変わってくる。

先日、夕食が妻の故郷の郷土料理である「芋煮」でおいしかったので

「芋煮おいしいね」と伝えると妻は「ありがとう」と笑顔。

翌日の肉じゃがもおいしかった。

しかし、連日だと昨日の芋煮への信憑性が落ちると思い伝えずにグッと我慢。

その翌日はオムライス。

一口食べすぐに「このオムライスおいしいね」と伝えた。

すると思いもよらない一言が。

「・・昨日の肉じゃがはおいしくなかったの?」

後日聞いてみるとオムライスの日は、仕事がうまくいかなかったそうだ。

伝え方がどんなに良くても

(今回は芋煮で味をしめたことがばれていたのかもしれない)

相手の状態、状況によって受け取られ方は変わる。

どう伝えたかではなく、どう伝わったか・・

オムライスの日、どのような伝え方が良かったのかはいまだにわからない。

写真は横浜イングリッシュガーデンの紫陽花と娘

感受性(湘南ゆうき村 課長 高橋宏明)

湘南ゆうき村

2023年4月に子ども家庭庁が発足された。

そして、202312月に

「幼児期までのこどもの育ちに係る基本的なビジョン

(はじめの100か月の育ちビジョン)」が閣議決定された。

幼児期までのこどもの育ちに係る基本的なビジョン(はじめの100か月の育ちビジョン)【やさしい版】 (cfa.go.jp)

『はじめの100か月の育ちビジョン』では

誕生前から就学前が人格を築く重要な時期と謳っており、

私自身、就学前までの記憶は少ないが、

無意識の中でその時期の経験が基盤となっているのだと思う。

何歳になっても、経験や学びが人格を形成し、

子どもだろうが高齢者だろうが

障がいがあろうがなかろうが、成長し続けると思っている。

私自身が学びから影響を受けたエピソードを紹介・・

小学六年生の時にテレビで再放送されていた

水戸黄門の主題歌『あゝ人生に涙あり』がクラス内で大流行。

「人生楽ありゃ苦もあるさ」という歌詞がとても印象的で、

「嬉しいことだけではない、

でも悲しいことがあっても次には嬉しいことがやってくる」と

自身に言い聞かせるようになった。

中学二年生の国語の授業で、

詩人茨木のりこさんの詩『自分の感受性くらい』を教わった。

当時、深い意味はわからず、安直な考えだが、

「人のせいにしない」、「人の悪口は言わない」と

心がけるようになった。

もちろん相手は相手、自分は自分なので、

他者が人のせいにしていても全く気にならない。

反対にそんな考え方もあるのかと学んだり、

言うことで気が晴れるのであれば羨ましかったりもする。

冒頭の『はじめの100か月の育ちビジョン』には環境の変化や

ライフステージ等の変化の『切れ目』について記載されている。

2023年度も残りわずか。

新年度を迎えるにあたり、各々環境や役割の変化があるが、

準備を整えて気持ち良く2024年度をスタートさせたい。

写真は湘南ゆうき村の玄関に置かれているいくちゃん人形です。

出勤するたびに見て、今日も頑張ろうと思っています。

「施設から地域へ」 (湘南ゆうき村・湘南だいち 施設長 妹尾貢)

湘南だいち
湘南ゆうき村

 前回のこの施設長日記で、報酬改定に向けての議論について少し紹介しましたが、2月6日に改定の概要がとりまとめられました。

 障害者総合支援法については施行以来3年に一度の見直しを行ってきましたが、今回は医療・介護とのトリプル改定ということもあり、これまでで一番大きな変更になっていると思います。

 今回の改訂のいくつかの重点項目のうち、一番にあがっている「障がい者が希望する地域生活を実現する地域づくり」について、引用して紹介したいと思います。

※詳細をご覧になりたい方は、ここにリンクを貼りますのでご覧ください。(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37772.html

(以下、障害福祉サービス等報酬改定検討チーム「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」から引用)

  • 障害者が希望する地域生活を実現する地域づくり

  • 障害者が希望する地域生活を実現・継続するための支援の充実

○障害者の入所施設や病院からの地域移行を進め、障害者がどの地域においても安心して地域生活を送れるよう、地域生活支援拠点等の整備の推進、グループホームにおける一人暮らし等の希望の実現、支援の実態に応じた適切な評価の実施、障害の重度化や障害者の高齢化などの地域ニーズへの対応等を行う。

○障害者が希望する生活を実現するために重要な役割を担う相談支援について質の向上や提供体制の整備を図るとともに、障害者本人の意思を尊重し、選択の機会を確保するため、意思決定支援を推進する。

○特別な支援を必要とする強度行動障害を有する障害者等への支援体制の充実を図る。

(中略)

(1)施設入所支援

①基本報酬の定員区分の見直し

・利用定員の変更を行いやすくし、施設から地域への移行を推進するため、利用定員ごとの基本報酬を10人ごとに設定する。

②地域移行を推進するための取組の推進

すべての入所者に対して、地域移行及び施設外の日中サービス利用の意向を確認し、希望に応じたサービス利用にしなければならないことを運営基準に規定する

・本人の希望に応じたサービス利用に実効性を持たせるため、

➢ 地域移行及び施設外の日中サービス利用の意向確認を行う担当者を選任すること

意向確認のマニュアルを作成すること

を運営基準に規定する。当該規定については、令和6年度から努力義務化し、令和8年度から義務化するとともに、未対応の場合は、減算の対象とする。

・地域移行に向けた動機付け支援として、グループホーム等の見学や食事利用、地域活動への参加等を行った場合を評価するための加算を創設する。

③ 地域移行の実績の評価

・障害者支援施設から地域へ移行した者がいる場合であって、入所定員を1名以上減らした場合を評価するための加算を創設する。

(引用ここまで)

 私が藤沢育成会で働き始めた1998年は湘南あおぞらがスタートした年でもありますが、当時からすでに、入所施設という住まいのあり方については議論があり、その後、長野県や宮城県などでは県立のコロニーの解体が議論されました。神奈川県では他県でコロニーと呼ばれるような大型の入所施設はありませんでしたが、津久井やまゆり園の事件をきっかけに、神奈川県が2023年4月「当事者目線の障害福祉推進条例」を制定しました。

随分と長い時間がかかりましたが、やっと制度上に「どこでどんな風に暮らしたいのか、本人に聞く」ということが、定められたことになります。

 この4月からはこの制度に基づいてサービスを提供していくことになりますが、仕組みができたとしても、実際の動きを伴わなければ、それは絵に描いた餅になってしまいます。

 利用者ひとり一人がしっかりとした情報や経験をもとに自分の生き方を選べるような支援をできるよう、我々支援者のちからがこれまで以上に問われていると感じます。

 ※写真は、先月法事で乗ったスーパーはくと

妹尾

3年に一度(湘南ゆうき村・湘南だいち 妹尾貢)

湘南だいち
湘南ゆうき村

 2024年度(令和6年度)は、3年に一度の報酬改定が予定されています。今回は、障害福祉以外にも、診療報酬と介護報酬との同時改定ということで、議論が活発化しています。

 論点の軸はいくつかありますが、物価高騰対策と、従業者の他業種との収入格差の是正について、ニュースなどでよく取り上げられるので、目にされた方もおられると思います。

 世間ではあまり話題にはならないけれど、注目している論点があります。それは「入所施設からの地域移行推進」です。これは、「インクルージョンふじさわ」の実現のためにも、とても大切な論点であると思います。理想の実現には、理念だけでなく現実の制度が大変重要です。

 今回の論点は、以前からさまざまに議論されてきたことですが、施設入所支援に関する制度変更は、これまで軽微なものが多く、ここまで踏み込んだものは、ほとんどなかったと思います。

 もしかすると、国連障がい者権利委員会が20229月に日本政府に対しておこなった障がい者施策に関する勧告の影響もあるのでしょうか。これは日本の障がい者政策が「パターナリスティック」であるという指摘を行ったものです。

パターナリズム(父権主義)に関しては、91日理事長日記参照

 107日付け福祉新聞の記事には、

 「厚生労働省は2024年度の障害報酬改定で、夜間に障害者をケアする「施設入所支援」の定員別の報酬設定を10人刻みにする方針を固めた。入所者がグループホーム(GH)やアパートなどに移行した後、空いた分の定員を減らすよう誘導したい考えだ。

~中略~

 厚労省は26年度末の施設入所者数を22年度末比で5%以上減らすよう都道府県に促している。地域移行だけでなく施設定員の削減も進める考えで、24年度の報酬改定は、これに関連した改定事項が多くなりそうだ。」とあります。

 10人刻みの報酬体系で、本当に定員が減っていくのか、もう少し刻みが細かくないと難しいようにも感じますが、方向性としては分かり易いと感じます。

 また、116日付け福祉新聞には、

 「厚生労働省は2024年度の障害報酬改定で、障害者支援施設で暮らす人が昼間に施設外の通所事業所で暮らすことを促す方針だ。施設外の通所事業所を見学した場合の加算を設けるほか、施設外の事業所に通う場合は、その通所先が得る送迎加算の対象とする。施設から地域生活への移行を進める動機付けにしたい考えだ。

~中略~

 厚労省の調べでは、施設外の事業所に通う入所者がいる施設は全体の25%。施設外に通う障害者はおおむね9人に1人にとどまるという。」

とあります。

 藤沢育成会の2つの入所施設は、以前から外部生活介護への通所を積極的に進めてきました。上記の記事を見ると、全国的には職住分離の割合は意外に低いようです。

 制度の変更は、現実の動きが先にあり、それをみながら制度がそれを後押しするように動いていくので、現実の動きがやっとここまで来た、ということなのだと思います。

 変化が起きるときには、先行きに不安を感じる部分もありますが、この動きが市民の生活の充実にむけて動いていく大きな流れになればと思います。

 今後も議論の方向性を注視しながら、きたる報酬改定に備えていこうと思います。