日記
湘南ゆうき村の施設長・課長日記
「施設から地域へ」 (湘南ゆうき村・湘南だいち 施設長 妹尾貢)
前回のこの施設長日記で、報酬改定に向けての議論について少し紹介しましたが、2月6日に改定の概要がとりまとめられました。
障害者総合支援法については施行以来3年に一度の見直しを行ってきましたが、今回は医療・介護とのトリプル改定ということもあり、これまでで一番大きな変更になっていると思います。
今回の改訂のいくつかの重点項目のうち、一番にあがっている「障がい者が希望する地域生活を実現する地域づくり」について、引用して紹介したいと思います。
※詳細をご覧になりたい方は、ここにリンクを貼りますのでご覧ください。(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37772.html)
(以下、障害福祉サービス等報酬改定検討チーム「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」から引用)
- 障害者が希望する地域生活を実現する地域づくり
- 障害者が希望する地域生活を実現・継続するための支援の充実
○障害者の入所施設や病院からの地域移行を進め、障害者がどの地域においても安心して地域生活を送れるよう、地域生活支援拠点等の整備の推進、グループホームにおける一人暮らし等の希望の実現、支援の実態に応じた適切な評価の実施、障害の重度化や障害者の高齢化などの地域ニーズへの対応等を行う。
○障害者が希望する生活を実現するために重要な役割を担う相談支援について質の向上や提供体制の整備を図るとともに、障害者本人の意思を尊重し、選択の機会を確保するため、意思決定支援を推進する。
○特別な支援を必要とする強度行動障害を有する障害者等への支援体制の充実を図る。
(中略)
(1)施設入所支援
①基本報酬の定員区分の見直し
・利用定員の変更を行いやすくし、施設から地域への移行を推進するため、利用定員ごとの基本報酬を10人ごとに設定する。
②地域移行を推進するための取組の推進 ・すべての入所者に対して、地域移行及び施設外の日中サービス利用の意向を確認し、希望に応じたサービス利用にしなければならないことを運営基準に規定する。
・本人の希望に応じたサービス利用に実効性を持たせるため、
➢ 地域移行及び施設外の日中サービス利用の意向確認を行う担当者を選任すること ➢ 意向確認のマニュアルを作成すること
を運営基準に規定する。当該規定については、令和6年度から努力義務化し、令和8年度から義務化するとともに、未対応の場合は、減算の対象とする。
・地域移行に向けた動機付け支援として、グループホーム等の見学や食事利用、地域活動への参加等を行った場合を評価するための加算を創設する。
③ 地域移行の実績の評価 ・障害者支援施設から地域へ移行した者がいる場合であって、入所定員を1名以上減らした場合を評価するための加算を創設する。
(引用ここまで)
私が藤沢育成会で働き始めた1998年は湘南あおぞらがスタートした年でもありますが、当時からすでに、入所施設という住まいのあり方については議論があり、その後、長野県や宮城県などでは県立のコロニーの解体が議論されました。神奈川県では他県でコロニーと呼ばれるような大型の入所施設はありませんでしたが、津久井やまゆり園の事件をきっかけに、神奈川県が2023年4月「当事者目線の障害福祉推進条例」を制定しました。
随分と長い時間がかかりましたが、やっと制度上に「どこでどんな風に暮らしたいのか、本人に聞く」ということが、定められたことになります。
この4月からはこの制度に基づいてサービスを提供していくことになりますが、仕組みができたとしても、実際の動きを伴わなければ、それは絵に描いた餅になってしまいます。
利用者ひとり一人がしっかりとした情報や経験をもとに自分の生き方を選べるような支援をできるよう、我々支援者のちからがこれまで以上に問われていると感じます。 ※写真は、先月法事で乗ったスーパーはくと
妹尾
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3年に一度(湘南ゆうき村・湘南だいち 妹尾貢)
2024年度(令和6年度)は、3年に一度の報酬改定が予定されています。今回は、障害福祉以外にも、診療報酬と介護報酬との同時改定ということで、議論が活発化しています。
論点の軸はいくつかありますが、物価高騰対策と、従業者の他業種との収入格差の是正について、ニュースなどでよく取り上げられるので、目にされた方もおられると思います。
世間ではあまり話題にはならないけれど、注目している論点があります。それは「入所施設からの地域移行推進」です。これは、「インクルージョンふじさわ」の実現のためにも、とても大切な論点であると思います。理想の実現には、理念だけでなく現実の制度が大変重要です。
今回の論点は、以前からさまざまに議論されてきたことですが、施設入所支援に関する制度変更は、これまで軽微なものが多く、ここまで踏み込んだものは、ほとんどなかったと思います。
もしかすると、国連障がい者権利委員会が2022年9月に日本政府に対しておこなった障がい者施策に関する勧告の影響もあるのでしょうか。これは日本の障がい者政策が「パターナリスティック」であるという指摘を行ったものです。
※パターナリズム(父権主義)に関しては、9月1日理事長日記参照
10月7日付け福祉新聞の記事には、
「厚生労働省は2024年度の障害報酬改定で、夜間に障害者をケアする「施設入所支援」の定員別の報酬設定を10人刻みにする方針を固めた。入所者がグループホーム(GH)やアパートなどに移行した後、空いた分の定員を減らすよう誘導したい考えだ。
~中略~
厚労省は26年度末の施設入所者数を22年度末比で5%以上減らすよう都道府県に促している。地域移行だけでなく施設定員の削減も進める考えで、24年度の報酬改定は、これに関連した改定事項が多くなりそうだ。」とあります。
10人刻みの報酬体系で、本当に定員が減っていくのか、もう少し刻みが細かくないと難しいようにも感じますが、方向性としては分かり易いと感じます。
また、11月6日付け福祉新聞には、
「厚生労働省は2024年度の障害報酬改定で、障害者支援施設で暮らす人が昼間に施設外の通所事業所で暮らすことを促す方針だ。施設外の通所事業所を見学した場合の加算を設けるほか、施設外の事業所に通う場合は、その通所先が得る送迎加算の対象とする。施設から地域生活への移行を進める動機付けにしたい考えだ。
~中略~
厚労省の調べでは、施設外の事業所に通う入所者がいる施設は全体の25%。施設外に通う障害者はおおむね9人に1人にとどまるという。」
とあります。
藤沢育成会の2つの入所施設は、以前から外部生活介護への通所を積極的に進めてきました。上記の記事を見ると、全国的には職住分離の割合は意外に低いようです。
制度の変更は、現実の動きが先にあり、それをみながら制度がそれを後押しするように動いていくので、現実の動きがやっとここまで来た、ということなのだと思います。
変化が起きるときには、先行きに不安を感じる部分もありますが、この動きが市民の生活の充実にむけて動いていく大きな流れになればと思います。
今後も議論の方向性を注視しながら、きたる報酬改定に備えていこうと思います。
『区別』から『統合』へ(湘南ゆうき村 高橋宏明)
『男性の育児休業取得率過去最高の約17%に!』
という見出しのネットニュースに目を引かれた。
よくよく読んでみると、この調査は厚生労働省が毎年行っているもので
2022年10月に全国の3300余りの事業所から回答を得たとのこと。
私自身、2度育休を取得しており、常日頃から気になっている話題。
地元の友人たちと仕事や子育てについて話していると、
育休を取ったこととあわせて
その期間(1度目は一か月間、2度目は三か月間)に驚かれる。
冒頭の育休取得率は、数日や1週間でもその率に入る。
もちろん、その家庭や会社によって事情は異なるので、
育休の期間に「長い」や「短い」はない。
しかし、希望した期間を取得させてくれた法人と事業所、
そして応援してくれた利用者さんとその家族に感謝している。
仕事と育児の両立がより難しくなるのは、妻の育休が終わり仕事に復帰した後。
子どもが体調を崩すと保育園から呼び出しの連絡があり、仕事を調整する必要がある。
仕事と子育ての両立の難しさを痛感する。
そして、「大事な仕事なのに、なんでこのタイミングで急に熱を出すの?」と
我が子を心配しながら葛藤するが、体調不良は予定をたてられるものではない。
仕事と生活を『区別』して考える
「ワークライフバランス」から
仕事と生活を『統合』して捉える
「ワークライフインテグレーション」という考え方に変化してきているそうだ。
様々な葛藤はあるけれど
これからも生活の経験を仕事へ
仕事の経験を生活へ活かしていきたい。
※写真は、休憩時間にリフレッシュできる、湘南ゆうき村屋上からの眺め
夏祭り(湘南ゆうき村・湘南だいち 妹尾貢)
先日、湘南だいちの夏まつりを開催しました。
その数日前から、熱中症アラートが発令されるくらい暑かったので当日の天候が心配でしたが、幸運なことに異常な高温にはならず、風もあったので屋外でも過ごすことができました。
昨年度までは、感染防止のため事業ごと別々な日に分かれて行い、普段のメンバー以外と交わる機会はほとんどなかったのですが、今回はだいち全体のお祭りとして行い、コロナ流行期間中にぷれっじを卒園された方やそのご家族にも声をかけさせてもらったので、大勢の方が集まり、お神輿担ぎやカラオケ大会、ダンスチームのパフォーマンスなど、大変盛り上がりました。
特に「 POWER IN DA PERFORMANCE(パワーインダパフォーマンス)」(クリックするとリンク先にとびます)の皆さんのダンスは、演者とお客さん入り乱れて、大盛況でした。
暑い中の準備はスタッフも大変でしたが、皆さんに楽しんでいただけたようで何よりでした。
なによりうれしかったのは、利用者ご家族同士でお話をする方や、卒園以来久しぶりにあった子供たち、保護者方などが談笑している姿があちらこちらで見られたことでした。
「酷暑」と言われるような気候になってしまった近年の日本の夏ですが、お祭りを実施する意味について考えるには良い機会になりました。
古来から、地域が共同体としての意義を確認し、遊びを通して協力体制を作っていくプロセスにお祭りは欠かせないものだったでしょう。「インクルージョンふじさわ」の日常を作るために、お祭りという「非日常」を作り出すこともまた我々の大切な仕事のように思います。
来年度にむけては、徐々に地域の皆様にも参加してもらえるよう、準備をしていこうと思います。
※お祭りの様子は、後日アップされるスタッフ日記をご覧ください。
写真は、油壷の磯です。マリンパークがなくなっても、海には人が集まっていました。
皆既月食 (湘南ゆうき村 課長/ 高橋 羽苗)
11月、皆既月食・天王星食が話題になりました。
今回は、皆既月食と天王星食(惑星食)が併せておきたことで400何年かぶりなのだったそう。次回の皆既月食と同時に見られる惑星食は300年ほど先の土星食だそうです。
昔の人は月食や日食は不吉と言われていたという話を、そりゃそうだろうなーと思っていたのですが、実は私が思っていたよりもだいぶ早い時代から日食や月食の予報がされていたそう。
今回の月食は条件が重なり、よりスペシャルなイベントとなりましたが、月食は多くて年に3回あることもあり、周期的なものという気づきから予報がされていたとのこと。その周期は莫大な記録を整理して導き出したものだそうです。
とはいえ、難しいことはわからずミーハーな私は、月食や日食、流星群などさまざまな天体ショーを楽しむだけ。今回の月食は、天気も良く月が大きく、きれいに欠け始めて...興奮をしながらの帰り道だったはずが、家に着いたらすっかり気が抜け、一番いい場面は実はちゃんと見ていないという結果に終わりました。
残念!
11月8日 皆既月食が始まる前の月と湘南ゆうき村です。
「生活支援の専門性を支える」 (湘南ゆうき村・湘南だいち 施設長/妹尾 貢)
12月に入って一気に寒くなりました。
今年度も半分が終わり、来年度に向けての準備期間に入っています。
今回は、法人で実施している研修を少し紹介させていただきます。
藤沢育成会が行っている研修は大きく分けて2種類、①一般向け研修と②職員向け研修があります。
- 一般向け研修(神奈川県から指定・委託を受けて実施)
・サービスセンターぱるが主に担当
「知的障害者ガイドヘルパー養成研修」:年2回
「行動援護従業者養成研修」年2回
・湘南ゆうき村・湘南だいちが主に担当
「強度行動障害支援者養成(基礎)研修」年3回
「強度行動障害支援者養成(実践)研修」年2回
「行動障害の予防的支援のための研修」年2回
があります。
これら研修は、法人の職員以外も参加できるので、他法人の同業の方たちと一緒に学ぶよい機会になっています。これら研修を通して、藤沢市や神奈川県の支援力の向上に貢献できればと考えています。
また、今年度からあらたに、強行研修のプレ研修的な位置付けで「行動障害の予防的支援のための研修」を、神奈川県から受託して実施しました。「予防」の言葉が示す通り、行動障害などの二次的な障害を生じないためには、支援する人たちが連携して、適切な支援を届けることが重要です。未就学~学齢期の支援者の連携のため、福祉と教育の垣根を超えた共通認識のために、今研修は、障害福祉の従事者に加えて、学校教員も受講していただけるような設定にしました。
実施してみると反響が大きかったので、当初の想定から規模拡大し、それぞれ約100名の参加がありました。
- 法人内職員向け研修は、法人全体研修、等級別研修、専門研修(必修・選択)資格取得研修、圏外派遣研修などがあり、私が担当している法人研修委員会は、主に専門研修(選択)の企画を担当しています。
今年度の選択専門研修は、これまでに、
・「地域共生社会に向けた取り組み」6月2日
・「家族の想い」7月7日
・「行動障害の予防的支援のための研修」7月26日、8月24日
・「行動障害の予防のための意思決定支援研修」8月31日
・「法人実践報告会」10月22日
・「地域生活推進検討会」11月29日
を実施し、このあと、1月と3月に専門研修を予定しています。
支援の現場を持ちながら、研修を受講したり、それを企画・運営したりすることは、それなりの労力を伴いますが、勉強することで仕事の質が上がり、それによって利用者やそのご家族の生活に貢献でき、喜んでもらえれば、それはまた、仕事へのモチベーションにもつながります。
研修を企画運営することは、実は受講する人以上に、自分の勉強になると感じています。内容を分かっていないと、他者に伝えることができないからです。
社会福祉・障害福祉の専門性は、生活に密着している分だけ幅がひろく、ちょっとわかりにくい部分もありますが、実は奥深く、知れば知るほど興味深いです。
職員もそれ以外の人も、面白く学んでいけるような研修になるように、法人全体で取り組んでいます。
(写真は、11月6日に、六会地区総合防災訓練に参加したときの様子です)