ひとりでいたい、にいっしょでいたい。(湘南あおぞら・小林 博)

▼Richard S Bolster作

being alone.jpg最近、facebookにハマっている。facebookは、いまや世界中に6億人以上の利用者を持つ、インターネット上のいわゆるSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)である。SNSは日本では、mixiが最大手で2000万人の会員がいると言われている。私もmixiを愛用していたのだが、映画『ソーシャルネットワーク』を観たのと、友人の誘いを受けたのを契機に1ヶ月ほど前から本格的にfacebookを始めた。

 

facebookは実名登録を基本にしていて、初めは実際に面識のある人と、いわゆるお友達登録をしていった。この登録をすると、相手の日記や書き込みが自分のページで読めるようになる。言わば芋づる式に友達の友達と友達になっていって、すぐに40人ほどとお友達になった。リアルの知り合いが、約3分の2、それ以外は面識はないが、ネット上で意気投合して結びついた人である。

 

そんな中で、Richard S Bolsterさんというアメリカ人とお友達になった。Richardさんは、自閉症の娘さんをもつお父さんで、その子育ての体験をもとに、Autism Artwork(自閉症作品集)というページをアップしている。その作品の一枚一枚が、しゃれたイラストや写真をバックに、自閉症を持つ人への支援について寸言で表した言葉をつけて、一枚のポスターのようになっている。数10枚コレクションされていて、どれも素晴らしいのだが、その中にとりわけ私が感動した一言があった。

 

"Being alone doesn't mean that you're alone."

 

直訳すると、「ひとりでいることは、あなたがひとりぽっち(寂しい、孤独)ということではない」とでもなるだろうが、この言葉は、自閉症をもつ人への支援の本質を簡潔無比に表した至言だと思った。前半のBeing aloneはご本人の状態をあらわしていて、後半のdoesn't mean that you're aloneは支援者のご本人への関わりの姿勢を表している。これを何とか、達意の日本語に訳せないか。支援論に思いを馳せながら、いろいろ頭をめぐらし、次のような日本語訳を考えた。

 

ひとりでいたい、にいっしょでいたい。

 

ひとりでいることにきちんと寄り添うこと。それはその人をひとりぽっちにすることでも、ほったらかしにすることでもなく、ひとりでいる自由を保証して支援することである。ひとりでいたいあなたに、わたしは寄り添って、あなたのひとりでいたい自由を保証する。それが、とりもなおさず、いっしょにいることなのだ。そんな気持ちを込めて、この訳文とした。
Richardさんに、あなたの素晴らしい言葉を日本語に訳して、私の友達に紹介しています、とメッセージを送ったら、すぐに返事が届いた。遠い国の人が、私の言葉を読んで、さらにそれを広げてくれるなんて、本当にインターネットによって世界は狭くなりましたね、と書いてあった。このRichardさんの言葉にとても嬉しくなり、facebookが取り持つ人と人の縁にひとり目頭を熱くしたのだった。

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