運動不足のせいか体が重く疲れがたまる。一頃のタフさに翳りが生じてきた。日常生活にリズムと活気を取り込まないと老化と体力の低下を加速させる。積極的なアンチエイジングが必要だが、別に無理をすることもない。童心に帰って夢中になれることをすれば自然にいい汗かけるし頭も冴える。
そこで、久しぶりに海に出る。お魚釣りだ。と言っても、いきなり炎天下の大海原に出ると熱中症になるといけないので慣らしのつもりで夜釣りといく。
夜釣りはムード重視の自分に合っているから好きである。だが、早起きしないですむというのが本当かもしれない。トワイライトタイムの港の灯りで風流を嗜む。三時間余りのお遊びでメバルやカサゴ、メジナにアイナメ、シロギスなどなど、五目釣り達成というのもしばしばだ。以前に板前さんから手ほどきを受けたので少しは魚料理に自信がある。釣りは二度楽しめるのだ。作れるのは焼きそばだけでないので念のため。
太陽がぎらつくこの時期には回遊するシイラが相模湾に入ってくる。大物狙いの若いフィッシャーマンが手始めにするゲームフィッシングだ。ルアー(疑似餌)をトップウォ―ターで高速に走らせると、海中から躍り出てきてルアーに喰らいついてくる。紺碧の背びれと金色の魚体はハッとするほど美しい。
数年前、シイラを探して数時間。大島付近まで来て巨大な群れに遭遇した。船の周りに数百?のシイラが悠々と泳いでいる。メーターオーバーも交じっている。船長は興奮して無線で僚船に連絡している。「お好きな子をどうぞ」であるが、金魚すくいとわけが違う。逸る気持ちを抑えつつ、ドラグを確認してから足を踏ん張ってロングキャ~スト。 同船していたアングラー君らも次々にルアーをキャストする・・・船中大騒ぎ。ズン!という重い当たりを感じたと思った瞬間、ドラグが唸り、ヒューンとラインが出ていく。ヒットだ!・・・が、それは、ルアーを奪い合うシイラの背中にたまたま引っかかったスレであった。だから、魚の重さは倍近く感じ、取り込みは労多くして時間がかかり、船足を止めてしまう。巧みなロッドワークを自負する自分にとって実に不本意である。気を取り直して二投目三投目とヒットしたが、いずれもペンペンという小物ばかりだ。そして、四回目は文句なしのフッキングで全長80センチぐらいのシイラを船上に上げた。ヤッた、ヤッた。と小躍りしながら獲物に近づいてフックを外そうとしたその時、脛に鈍痛を感じた!? 事もあろうにシイラの口に掛けたルアーのフロントフックが自分の足に突き刺さり、シイラと繋がってしまったのだ。暴れている魚に不用意に近づいたからだ。メスのシイラだったが、今さらこんな生臭い魚とは結ばれたくない。手返しの早さをモットーとする自分にとっては"ミットモナイ"の最上級。「痛てて!」などと喚けば、さらに無様になるからグッとこらえたが、これはもう最低限だろう。同情の視線を送ってくれたアングラー君らはU30の若者ばかりでオヤジ世代は自分一人だった。ドジを踏まずに2~3本決めてれば「俺もまだいける。」と思ったし、みんなに迷惑かけずにすんだ。しかし、この日は、やることなすことイメージ通りに行かなかった。吹きまくろうと思っていた武勇伝どころか、シイラ捕りがミイラになってしまった。だが、エキサイティングな釣りはアンチエイジングには欠かせないと思っている。腰が曲がったら静かにハゼ釣りでもしよう。
▲写真1 魚群を探してクルージングする"夢追い釣り師達"
▼写真2 その日、一番ヒットしたルアーの事を "match the bait"という。
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