映画雑感 (湘南ゆうき村・植村  裕)

先日、家人のリクエストで「アジョシ」という韓国映画を観に出かけた。昨年韓国でナンバーワンヒットを獲得したサスペンスアクション映画である。レイトショーだったので眠くなるのが心配だったが、犯罪者集団に立ち向かう主演のウォンビンと子役のキム・セロンの演技が際立ち、2時間があっという間に過ぎた。

 半世紀近く前の話である。父親が映画好きだったので、幼いころから映画を観に行く機会が多かった。給料日の後、家族で映画を観て食事(主にラーメン)をするのが、貧しい時代のささやかな贅沢で、とても楽しみだった。印象に残った映画は洋画では「小鹿物語」「ローマの休日」「チコと鮫」「ウエストサイド物語」などがある。また、エルビス・プレスリーの一連の作品は洋楽を聴くきっかけとなり、今でも思い出深い。邦画は近所に映画関係の方がいらしたので、よく映画券をいただき、片岡千恵蔵の「七つの顔の男(多羅尾伴内)」市川雷蔵の「大菩薩峠」小林旭の「渡り鳥シリーズ」(小林旭より穴戸錠のエースのジョーのほうがカッコよかった)などを観た。小学校に入る前から小学校低学年の時期なので随分ませたものを観ていたと思うが、今でも思い出すシーンがあり、それだけ鮮烈な印象を受けたのだろう。

 かつては本編の前にニュース映画というのが上映されていたが、そのナレーションのトーンが独特で今も耳に残っている。当時、渋谷にはニュース映画専門館というのがあり、入場料が1020円だったと思うが、一日ニュース映画を流していた。買い物に行ったついでに何度か父親に連れて行ってもらったが、入れ替えがなく、冬は暖房が利いているので、寝ている人(今でいうホームレスの人?)もいて不思議な雰囲気だった。

 現在は映像技術が発達しDVDやケーブルテレビで、家に居ながらにして、クオリティの高い映像や音響で映画を楽しむことができるようになった。私も家で映画を観るようになり、すっかり映画館から足が遠のいてしまった。久しぶりに映画館に行き映画を観て、何か忘れていたものを思い出したような気がした。映画館へ出向き、チケットを買い、自分の好きな席を探しシートに身を委ねる。上映時間まで期待しつつパンフレットを読みながら上映を待つ。ベルが鳴れば、リピートの利かない映画との対峙が始まることを。

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