Macin亭日乗・其の二(湘南セシリア副施設長・小林博)
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<原文>

前回のこの欄を読みし数名の人士より、題名の意味不明なり、教示願いたしとの申し入れありき。確かに、独りよがりにて、余人には解読し難き題名なりしかと、反省しきりなり。
種明しするは赤面の至りなるも、Macin亭日乗は『断腸亭日乗』の剽窃、物真似なり。言わずもがななるも、「断腸亭日乗」は、永井荷風の日記にして、わが近代日記文学の白眉と誉れ高きものなり。かように「~亭日乗」は、荷風大人にあやかりしものなれど、されば「Macin亭」とは何者なるか。ここいらが、わが独りよがりの所以なり。すなわち、「Macin亭」は、「Macintosh」のもじりなり。これも言わずもがななるも、「Macintosh」は、わが偏愛するApple社のコンピュータの製品名なり。「Macin亭」は、「マッキントッシュ、マッキンテーシュ、マッキンテー」と、わが脳内でのみ通用する駄洒落なりき。
荷風大人とApple社の異種混合にて「Macin亭日乗」とわが日記を命名せしが、それも一人我が意を得るのみの「とんでもネーミング」なりしかと、また駄洒落にて、失礼仕り候。


×月×日

倫敦五輪、女子蹴球競技をテレビジョンにて観戦す。運動競技に一切興味これなく、テレビジョン観戦など縁遠き身なれども、「なでしこジャパン」のみは例外なり。

一度仮寝し、深更に起き上がり、とくと観戦せり。顔本(facebook)仲間も数人同時同況なるに、顔本にて実況書き込みなどしつつテレビジョン画面に食い入るなり。

普段、活動写真など通じ、仏蘭西女子に懸想したる国際男児なれど、この時ばかりは大和撫子の熱烈なる信者に変身せり。

蹴球の技や術につきては全くもって不案内なるも、なでしこの面々の烈々たる情熱と同朋同女を思い遣り労る純なる心情は、素人目にも刮目すべきものに映れり。

2点先取し、1点追いつかれし後の、なでしこらの防御戦は、まさに死闘というにふさわしきものなり。特に福元選手の、一寸一秒を先読みして球を捕り、或いは弾く機敏にして勇敢なる防御者としての働きは、文字通り大和撫子の鑑というにふさわしきものなりき。

堅固なる守りこそ、大和撫子の真骨頂なりと改めて得心せり。かの大東亜の大戦にては、女子、良く銃後を守るべしと命ぜられしが、今時本邦にては、堅固なる守り手たる女子こそ、すなわち最前線の攻撃手たることをなでしこジャパンの勝利がよく証したるものなり。



<肉食系女子語訳>

アタシ、この前の日記に「Macin亭日乗」な~んて題名つけちゃったんだけど、よくわかんねえ、って苦情をもらっちゃった。やっぱ、誰~れも理解してくれなかったみたい。いろんな人から「意味分かんねー」って言われちゃった。ちょっと自己チューの題名だったと反省して、一応説明しとくね。

これでもアタシ、文学少女だからさ、永井荷風が好きなわけ。実は、荷風の『断腸亭日乗』はヒミツの愛読書なんだ。で、マネして「~亭日乗」ってしたわけ。一度これやってみたかったんだ。でもって、だけど、じゃ「Macin亭」ってなんだっていう話ね。

これは、実はMacintoshのモジリアーニなのね。(あ、また自己チューダジャレで自爆。日本語の『もじり』と画家の『モジリアーニ』のひっかけね。)「マッキントッシュ、マッキンテーシュ、マッキンテー」って、ヒドイね、ダメだこりゃ。

でも一度看板出しちゃったから、「Macin亭日乗」は引っ込めない。日本女子は強いのだ。


×月×日

ロンドンオリンピックの女子サッカー、準決勝をテレビで珍しく見た。アタシ、スポーツは全然キョーミなしで、テレビで見ることなんてまずあり得ない。だけど「なでしこジャパン」だけは、何故か例のソトなんだなあ。

ちょっと寝て、夜中にむくっと起きて、じっくり見させてもらいましたよ。facebook友達にも同んなじことやってる人が何人かいて、キャーキャー書き込みしながら盛り上がって見ちゃった。

いつもはさ、フランスギャルのファッションなんかYou Tubeで探してマネしたりする、グローバル派だけど、こん時だけは大和撫子の超オタクファンにヘンシーン。

細かいサッカーの技術的なことなんか何~んにも分かんないけど、なでしこたちの勝ちを取りに行くアツイ気持ちとチームメートを大事にするハートは、アタシみたいなド素人にもよーく分かった。

2点先に取って、1点追いつかれた後、なでしこたちは防御戦になったけど、ハラハラ、ドキドキ、すごい闘いだった。特に福元選手の、ぱぱっと先を読んで球を捕ったり、弾いたりする素早いキーパーぶりは、大和撫子のお手本って感じだったなあ。

堅~い守りが、大和撫子のキモだってことがよく分かった。

アタシこれでも歴女だから知ってるけど、太平洋戦争では、夫や恋人や息子を戦地に送り出した女たちは、銃後を守れ、って言われたんだよね。戦うのは男に任せて、女子はバックヤードを固めろってね。だけど今の日本では、堅い守りのできる女子が、実はフロントで活躍する最良の戦い手だってことなんだ。なでしこジャパンの勝ちっぷりを見て、よーくそのことが分かった。同じ女子としては、鼻が高いぞ、ツンツン。



<草食系男子語訳>

前回の日記にボクは、「Macin亭日乗」という題名を付けさせてもらいました。これが意味不明とのご指摘をたくさんの方からもらってしまい、ものすごく申し訳なく、恥ずかしくなってしまいました。ボクとしては、面白いつもりでしたが、完全にスベッていたようで、ごめんなさい。

~亭日乗」は、永井荷風先生の『断腸亭日乗』をマネしたんです。ボクはいままで、「そんなレア物知らねえよ」と言われるのが怖くて、誰にもコクったことないけど、荷風先生のオタクファンなんです。それで、せめて題名だけでも先生にあやかりたくて。
でも、「Macin亭」はもっと分かりませんよね。反省、反省。これはメジャーなんでみんなにも言ってるけど、ボクはApple社の大ファンで、「Macin亭」はMacintoshの勝手なもじりなんです。「マッキントッシュ、マッキンテーシュ、マッキンテー」ってつもりですけど、誰にも分かりませんよね。ほんとに、ごめんなさい。
いつも先輩に、もっと自信持てっていわれるけど、この日記書いて、ちょっと落ち込んじゃいました。でも、頑張ります、ボク。


×月×日

ロンドンオリンピックの女子サッカー、準決勝をテレビで見させていただきました。ボクは、スポーツは全然分からなくて、普通テレビで見ることなんてないんです。だけど「なでしこジャパン」だけは、どうしてか見てしまったんです。

いつも早寝だからちょっと寝て、夜中にがんばって起きて、じっくり見ました。数少ないfacebook友達にも同んなじことやってる人がいたので、シコシコ書き込みなんかしながら、珍しく萌えました。

恥ずかしいけど、コクります。フランスにもAKB48みたいな女の子たちがいて、いつもは、その子たちに萌えなんですけど、この時だけは大和撫子の超オタクファンにならせていただきました。

サッカーのことは、全然知らないんです。でも、なでしこたちの勝ちたいというすごく熱い気持ちと女の子同士の互いを思いやる友情は、ボクみたいサッカー厨房にもよく分かりました。

2点先に取って、1点追いつかれた後、なでしこたちは防御戦になったようでしたが、手に汗握って、頑張れって、応援しました。特に福元選手が、キーパーとしてぱっと先を読んで球を捕ったり、弾いたりする姿はカッコよかったです。大和撫子は、これでなきゃと思いました。堅守こそが、大和撫子の強みだってことがよく理解できました。

高校の歴史で教わったけど、太平洋戦争では、夫や恋人や息子を戦地に送り出した女子たちは、銃後を守れ、って言われたそうです。男たちに戦いは任せて、女は後ろに引っ込んで、慎ましく働いてろって。でも今の日本では、堅い守りのできる女子が、実は前線でばりばり働きまくる、すんごい働き手なんです。。なでしこジャパンの勝ち方を見て、はっきりそのことを認めさせていただきます。すいません、男としては、情けないけど。草食系だから許してください。



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