▼岡本太郎氏のように爆発したい若者。
落書きをすると器物損壊罪(刑法第261条)となる。塀やシャッターにスプレーなどで描かれた汚い落書きは荒廃した街と犯罪の臭いが漂う。70年代にNYで発祥した"タギング"という落書きはストリートギャングの縄張りを示すものとかで日本国内で見られるファッション化された落書きはその影響によるもの。だから間違ってもウォールアートの巨匠、岡本太郎氏の真似ではない。だが、一部ではこのストリートアートがリーガルグラフィティ(合法的な落書き)として市民権を得、ポジティブな活動の範疇で手掛けられている地域もある。例えばリオのスラム街の少年たちが、ある切っ掛けから手にする物を銃から筆に持ち替え、町全体をペンキで絵を描き、アートの力で犯罪による負の連鎖を断ち切ったという話を聞いた事がある。人々に優しさを取り戻すのはアート。犯罪の温床が落書き。良くも悪くもエネルギーを発する人間の仕業だ。
ロンドンを中心に活動する"バンクシー"という謎のストリートアーティストがいる。社会風刺的にさりげなく描き上げたアートは表現力に富み、センスとアイデアが光って街の景観に溶け込んでいる。そして、世界各地でゲリラ的に描いてしまうというから、落書きの域を超えた、まさに芸術テロリストだ。このストリートアート。決められたキャンパスに描く芸術とは違って自由とアイデアと創造性が溢れている。こんな絵なら是非我が家の塀にも描いてほしい。不景気のあおりでシャッター街となった商店会の会長には耳寄り情報だが、全店シャッター上げたら意味が無いか。
▼モノトーンの業界イメージ。彩を添えるのは、やっぱりアート。7月6日、SFC七夕祭に参加。
さて、話題転じて我業界。ストリートアートほど世間のお騒がせではないが、アウトサイダーアートなるカテゴリーがある事を知ってほしい。アウトサイダーアートとは、D.マクラガンの『アウトサイダーアート』によれば、「何らかの意味で社会の周縁にいる人々の手になる特異な作品を指す」。唯一無二の個性的なアマチュア作家から知的障がい者、精神障がい者まで、いわゆる正統派といわれる美術作家以外のアーティストによる作品である。正式な美術教育を受けていなくても、優れた作品は本物しか発する事のない異彩を放っている。これらの作品は、例えて言うと、奇想天外、孤立無援、戦術無し、ご意見無用と言った異端ぶりを発揮し、新しい芸術の可能性をカタチにしている。また、文化によって汚されていないあまりにもピュアな表現の作品は人間の内面と言うディープな領域に足を踏み込みかねない怖さがある。
まだまだ、世間に知られることの少ないアウトサイダーアートだが、よし介工芸館では、いつもそんなにシリアスな芸術論を戦わしているわけでもなく、遊び心満載な作品作りを自由奔放に楽しんでいる。描け、描け!とばかりに駄作秀作、玉石混交の山。いつか爆発する事を夢見て"アウトサイダーアーティスト"の出現に期待している。
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