青い鳥を探して(17) (事務局・増田 達也)

3年前、ある特例子会社 【民間企業や地方自治体が、障がい者の経済的自立・雇用促進を目的に設立する子会社で、障がい者従業員が5人以上、全従業員に占める比率が20%以上であること等、いくつかの条件を満たすと認定される会社です】 の社長さんの講演を聞く機会がありました。

 

「障がい者は素晴らしいです。障がい者に対する偏見は今すぐ捨てて下さい!」・・・開口一番の言葉でした。「障がい者は役に立たない、何をするか分からない迷惑な人たち」という見方は「偏見」ではありますが、それまでの私は、障がい者も一人ひとり個性を持った方たちなので、逆に「障がい者は素晴らしい・・・」とひとくくりに言い切るのも、「偏った(かたよった)見方」という意味では、「偏見」だと思っていました。なので、失礼ながら、また傲慢ながら、斜に構えて聞いていたのですが、1時間話し終えられた時に「彼らの素晴らしさの10分の1も語れませんでした」と仰った熱い言葉に、きれい事や口先だけではなく心から「障がい者は素晴らしい」と思っておられる本物の姿勢を感じ、大いに感銘を受けました。

                                  

エピソードの中で、障がい者従業員が、日頃の倍のノルマを達成したお話しがあったのですが、私も同じ経験をしました。

20年前、企業の下受けの軽作業をしていた時のことです。

職員2名、利用者8名で、一日2箱ペースでやっていたのですが、ある時この会社の担当のAさんから「今日中に4箱仕上げてもらえないか?」という電話がありました。いつもの倍は無理なので断ろうとしたのですが、やり取りを聞いていた2人の利用者(H・SさんとY・Oさん)が「やる!」と訴えてきました。私は「やりたい気持ちは嬉しいけれど、結果的に出来なければ、会社やAさんにご迷惑をお掛けすることになりますよ」と言ったのですが、「どうしてもやりたい!」ということでお引き受けしました。この2人は、昼食も大急ぎで食べ、休み時間も返上して、一生懸命やり、夕方に4箱仕上げることが出来たのですが、2人で、「これでAさん、喜んでくれるよね~」「そうだね、良かったね~」と話していて、とても感銘を受けました。

「頑張ったんだから偉いでしょ」と自慢するわけでもなく、「工賃増やしてよ」と要求するわけでもなく、「他の利用者はあんまりやってない」と非難することもなく、この2人にとって、頑張った原動力、モチベーションは、「Aさんに喜んで欲しかった!」ということで、この爽やかでさりげない2人のやり取りは、昨日のことのように、はっきり脳裏に焼き付いています。

「自立」とは、「自分で自分のことが出来る」ということだけでなく、「お互いに助け合えること」だと教えられました。自分で自分のことが出来ても人から求められた援助を断る人は自立していない、逆に、自分で自分のことが出来なくても人から求められた援助に気持ちよく応えられる人は自立しているのだ、と思いました。人が必要としていることを察知し、人に喜んでもらうために見返りを求めないで自分の最大限の力を発揮するこの2人の姿に、私もしっかり「喜び」をシェアしてもらいました。

 

私も障がい者の方々と関わってきて、感動したこと、教えられたことは多々ありますが、そのエピソードを1時間も話せないですし、日々、障がい者の方々の素晴らしさを見つけよう、感じようとされている講師ご自身が素晴らしく、見習わなければいけないと、自分を恥じいった講演会でした。

 

        ▼H・Sさんと Y・Oさんが頑張った「右手に持った棒にリングを通す作業」です。

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