堂ヶ島にて (みらい社・植村  裕)

先日、家の用事で伊豆の堂ヶ島に行ってきた。西伊豆は一泊すると伊豆半島を一周したり、箱根に寄ったりと、海と山を楽しむことができるのだが、ここのところ車の渋滞がいやで、足が遠のいていた。30年近く前のことであるが、箱根からのドライブの途中、堂ヶ島にある「三四郎」というホテルの温泉に立ち寄ったことがある。露天風呂から眺めた夕暮れの冬の海の情景がとても美しかったことを思い出した。今もホテル「三四郎」は健在であったので、何かうれしい気持ちになった。

用事も済み時間があったので、堂ヶ島の洞窟巡り遊覧船に乗ることにした。変化に富んだリアス式の海岸線や三四郎島などの小さな島々が海に浮かび、なかなかの景観であった。とくに天窓洞は洞窟内に船で入り、天窓から差し込む日差しで海面が青白く光り神秘的であった。

遊覧船から降りると「加山雄三ミュージアム」があると聞いたので行ってみた。加山雄三というと湘南のイメージであるが、彼が所有している船が西伊豆町の漁港に係留されていて、その縁でここに開設されたそうである。館内には彼の描いた絵画や鉄道模型、船の模型、映画のスチール写真・ポスター、愛用のギターなど様々なものが展示されている。私が一番興味を持ったのはモズライト社製のギターである。ベンチャーズ、寺内タケシ、そして加山雄三らが愛用し、かつての「エレキブーム」の一翼を担ったギターである。しかし現在はかなりマニアックなギターとなっている。映画「若大将シリーズ・エレキの若大将」で蕎麦屋の出前役の寺内タケシが若大将のバンドに加わり、バンド合戦でギターの素晴らしい速弾きテクニックを披露していたのが印象的だった。

小学校の頃、夏休みと冬休みに東京のいとこの家に泊まりに行くと必ず映画を見に出かけた。それは「ゴジラの怪獣もの」で、同時上映されたのが「若大将シリーズ」であった。「クレイジーキャッツの無責任シリーズ」の場合もあったが、私には若大将シリーズが面白かった。若大将はスポーツ・音楽が万能、お年寄りにやさしいまっすぐな好青年で、恋をしたり、様々なピンチに遭うのだが、最後はうまく切り抜けるのである。単純なストーリーであるが、親しみやすい若大将は当時、等身大のヒーローであった。若大将も素敵であるが、私が興味を魅かれたのは田中邦衛が演ずる「青大将」であった。青大将は同級生の若大将をライバル視し、若大将の邪魔をしたり、恋敵として卑怯な手段を使ったりするが、結局失敗してしまうのである。悪役であるがコミカルで憎めない役柄を好演し、若大将シリーズには欠かせない存在であった。後に田中邦衛は「北の国から」の黒板五郎役で素晴らしい演技を見せ、私達を感動せしめた。私の好きな役者の一人である。

 堂ヶ島を訪れて、ご無沙汰していた若大将と「再会」するとは夢にも思わなかったが、懐かしく楽しい一日であった。

幻想的な天窓洞.jpg

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