私の原点(湘南あおぞら・伏見康一)

去る7月26日(日)、「バリアフリービーチ」というイベントにボランティア参加してきた。これは鎌倉材木座海岸の一角にコンパネで通路を作り、車いすユーザーの方でも砂浜に降り海水浴を楽しめるようにサポートするもの。楽しそうだなあという気持ちと頼まれちゃったしなあと気軽な気持ちで参加したこのイベント。砂浜で皆と楽しんでいる時、ふと思い出した記憶...私の「原点」。


25年前、ただ学生生活だけを送るのでは物足りなく、なんとなく軽い気持ちで車いすの方達の外出ボランティアを始めた。同じサークルに「おじゃま」して活動し、春は花見、夏は海水浴、秋はイベント、冬はスキーなど、1年中みんなで外に出かけていた。25年前はちょうどこのサークルの10周年イベントを企画している頃であった。毎年のように海水浴に行っていた皆から上がった記念イベントの希望は「ハワイに行きたい!」だった。

今までの外出はボランティアで企画し、日程や行き先を決めていた。ただしさすがにハワイ旅行となるとボランティアだけでは無理なので、旅行代理店にかけあった。これが思いのほか難航。大手の旅行代理店ではこちらの希望を受け入れてもらえず、やむ得ず断念。紆余曲折を重ねようやくこちらの希望を受けて頂ける代理店が見つかった。

この代理店の方が献身的にコーディネートしてくれたお蔭で、いよいよ車いすユーザー約20名、ボランティア・家族40名の計約60名の団体でのハワイ旅行は決行された。私たちのイベントはいつも皆が晴れ男、晴れ女か!と思うくらい晴天に恵まれる。到着した日も絶好の好天だったと記憶している。ハワイの海はとても美しく、穏やかだった。さらに沿岸の歩道も広くて段差もなく車いすが通るのにも不便はなかった、と記憶している。念願の海水浴をはじめ、買い物、食事、ホテルでの宿泊、とても楽しい夢のような日々はあっという間に過ぎていった。

旅行最終日前夜。我々サークル恒例の「お楽しみ会」を開催した。皆で輪になり、ゲームなどを行うもの。ホテルの一室を使い、ハワイ最期の夜を満喫していた我々の輪の中に現地の方々も次々に入ってきてくれたのだ。輪はあっという間に大きくなり言葉もルールも関係なく、皆が笑っている。
最初は輪の外にいた代理店の方も、気が付いたら輪の中にいる。しかも「すごいなあ」「すごいなあ」と連呼しながら...。涙でぐしゃぐしゃになっていた彼の顔を見た時、秘められていた覚悟を察した。そう、彼もこの旅のリスクと安全の自問から「解放」されたのだろう。
最終日。「このままハワイにずっといたい」「次もまた来る!」との声が聞かれるなか、帰路についた。解放感と充実感と疲労感などが入り乱れた日々。

この日々こそ私の福祉の「原点」。これらを契機に福祉を生業とし、いつしか時は過ぎていった...忘れかけていた貴重な記憶。


さて、話は現在に戻る。
冒頭に記したバリアフリービーチは楽しく開催する事が出来た。約20人の車いすユーザーと多くのボランティア、ご家族が集まった。海を体現し逞しくなった男子たち、積極果敢な女子たち。自然がもたらす解放感に溢れる時間はあっという間だった。私自身は年を重ねるうちに薄らいだ記憶を甦らせ、自分の足元を見つめ直すいい機会を得られた。

マスコミ各社の報道の効果もあり、注目を集めたこのイベント。来年も開催するようだ。関心ある方、是非一緒に現実から解き放たれませんか!IMG_0765.JPG                     ▲鎌倉材木座に作ったバリアフリービーチ

IMG_0780.JPG                    ▲約25年前。ハワイにて撮影

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