私は今年度自分が住んでいるマンションの管理組合代表(理事長)を拝命している。
期首の理事会では総会決議事項の整理や年間計画の確認などに追われていた。
会議も終わりにさしあたる頃、唐突に年配の女性理事より
「私、ゴミ当番は大変なの。朝早くから辛くて辛くて...」との発言があった。
たしかに、早朝にコンテナ並べをする当番は当組合が長年に渡って棚上げにしてきた課題であった。だが「負担にはなるけど、今までみんなで輪番制を組んできた。新しい方式を考えるにも大変だし、このまま続けるていくしかない」との暗黙の妥協により今日まで続いてきたのだった。
そのためこの発言も「理事である限りはやりましょうよ。誰かに手伝ってもらえば大丈夫でしょう。」との返答が出るに留まった。
だが次の会でもこの女性は同じ意見を発言した。繰り返された発言に別の1人の理事が動いたのである。
「よし。変えましょう。だってみんなも大変でしょ。みんなが大変な事は変えようよ」と。
そしてこの方が地区内の資源回収ステーション全て回り、地区内の現状を調べ上げて
くれた。その結果現れた私たちの課題と成果。
それから幾度となく理事会でこれからの新たなやり方の方向性を纏めた。
今までのルールを変え、住民の不便も伴う...またステーション内の整備も必要となり、業者による修繕・手直しに多額の費用が掛かる...そしてステーション変更に伴う市との折衝も必要だ...。
正式に議案を採択する臨時総会の場。反対、批判、不満意見が出てくる事も想定され気が重いまま議事を進めたが、予想を覆し「素晴らしいよ、どんどんやってよ」との発言をきっかけに反対者0、満場一致で本案は可決された。
その後工事も無事着工し業者の誠意ある丁寧な工事のおかげもあり2か月に及ぶ工事はクレームやトラブルは一切なく引き渡しする事が出来た。
生活の質を上げていくには、時に苦悩と我慢を要する。だが個人の身勝手ではない「みんなのため」の考え方は確実に伝わっていくものだと痛感した。
何よりこの取り組みの契機を作った女性理事のあの発言がなければこの工事は行われてはいなかった。勇気ある発言に深く感謝している。
人生の先輩の発言を謹受する謙虚な心を持たねばならぬ事をあらためて教えられた。
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