東田直樹さんから/への感謝の言葉(サービスセンターぱる・小林 博)

東田さんチラシ.jpgNPO法人全国障害者生活支援研究会(通称サポート研)の主催で2月13日~14日に「全国障害者生活支援研究セミナー」が東京・新宿のNSビルで開催された。毎年2月に恒例となっているこのサポート研の研究セミナーも、今年で17回目になる。私はサポート研の理事を務めているので、この研究セミナーについては企画運営の立場でずっと関わってきた。今回はメインの講演に東田直樹さんの講演をお願いした。一昨年の4月に藤沢育成会の職員研修で東田直樹さんをお呼びし、講演をしていただいた。その講演を聞いたときの衝撃と感銘は未だに忘れられない。多くの藤沢育成会職員も同様だと思う。東田直樹さんは、NHKの番組に出演されてから、講演依頼が殺到しているご様子で、サポート研の研修会での講演依頼もお引き受けいただけるかどうか不安があったのだが、藤沢育成会職員研修会でのご縁があったので、お忙しいスケジュールを調整していただくことができたのだった。

 

 

東田直樹さんからのご要望もあり、講演当日は専属のヘルパーが付き添うことになった。そのヘルパーをサービスセンターぱる職員の小野田智司さんにお願いした。本番の講演も質疑応答の内容も素晴らしいものだったのは言うまでもないが、ヘルパーとして付き添わせてもらった小野田さんと東田直樹さんとの間に感動的な裏話があったので、ご紹介したいと思う。

 

講演の始まる前に舞台でマイクのセッティングをしていた時のことである。東田直樹さんとお母様の東田美紀さんが舞台上のテーブルの前に座り、マイクテストをした。ところが東田直樹さんのワイアレスマイクの声が途切れてしまう。どうしてだろう。理由が分かった。東田直樹さんは、話すとき前傾姿勢になり、握ったマイクはテーブルの下の方にもぐり込むような形になる。ワイヤレスの発信部分は下部についているので、マイクがその位置にいってしまうと電波が飛ばなくなってしまうのである。何度か試したが、ダメだった。さあ困った。このままでは講演が成り立たなくなってしまう。どうしよう。パニック状態になりかかっているスタッフの中から小野田さんの大きな声が響いた。

「そうだ、あれ使えばいいんじゃないですか、あの有線マイク」
舞台の右側に司会者用の演台があり、そこに有線マイクが設置してある。それを使えばいいのではないかと小野田さんが気づいたのである。小野田さんは、東田直樹さんの足元に有線用のマイクジャックがあることも確かめていた。早速、有線マイクを持って来てセットし、東田直樹さんに使ってもらった。もちろんオッケー、こんどはマイクがどんな位置に行っても声はしっかり通った。スタッフ一同ほっと安心し、事前準備を無事終えることができた。

 

本番の少し前になって、手製の文字盤を一文字ずつ指して、一音ずつ丁寧に発音する独特の方法で、東田直樹さんが小野田さんに話しかけてきた。

「色々と考えてくださってありがとうございました」

 


小野田さんは、このお礼の言葉を聞いてとても感動した。この場面はご本人同士しか知らず、私も後日小野田さんからこのエピソードを聞いたのだが、大変感動した。その感動はある種の驚愕を含むものでもあった。
東田直樹さんは、講演の時の質疑応答では文字盤を使いながら受け答えをされる。質問者の意図を十分に理解したうえで、実に的確な言葉で、相手への気遣いも含めて、素晴らしい答えをされる。だがそれは講演という公的な場面だからこそで、日常の場面では文字盤を使ったコミュニケーションはそれほどお使いにならないのではないかと推測している。それなのに東田直樹さんは、小野田さんに対して、面と向かって、文字盤を使って、敬語も交えた素晴らしいお礼の言葉を言ってくれたのだった。これは小野田さんにとっても大変光栄なことだと思う。そしてそれ以上に「色々と考えてくださってありがとうございました」という言葉は、東田直樹さんが他者の行動や気遣いを細やかに受け取り、それに対して情感豊かな感謝の念をお持ちの方だということを証していると思う。

 

小野田さんと一緒に私も東田直樹さんの言葉に、こちらこそとお礼を言いたい。
「東田直樹さん、私たちがまだまだ何も知らないということを教えてくださって、ありがとうございました」

 

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