コジェネで脱原発

福島の原発事故の惨事以降、エネルギーについて国民が大きな関心を寄せています。
特にこの50年以内に深刻な大事故を起こしている原発は、災害防止や廃棄物処理まで考慮するとコスト的にも一番金がかかり、危険なシステムであることがようやく理解されるようになってきましたが、それでも停電をちらつかせながら、原発を復活させようとする動きが止まりません。しかし本当に原発がないと停電になるのでしょうか?

この議論で故意にか、ウッカリか、あまり議論になっていないのが、「エネルギーは電力だけではない」という事です。実際に一般家庭や工場、オフィスで使うエネルギーのうち電気でなくてはならないのは照明と、テレビやパソコンなどの電子機器くらいで、これはエネルギー全体の20%以下です。後はほとんどが給湯、冷暖房、調理などの熱関係です。このうち明らかに電気の方が効率が良いのは小型の冷房装置や冷蔵庫くらいではないでしょうか?
そこで最近工場などで使われているコジェネという技術が注目されています。

電力会社の火力発電や原子力発電から工場など個別の施設で利用される小規模な発電まで、電気に変わるのは使った燃料の持つエネルギーの30%~40%程度で、残りはほとんどが熱です。大規模な発電所ではこの熱が多すぎて使いきれないので、ほとんど全てを温排水として海に捨てています。このため大規模な発電所の総合熱効率はせいぜい40%です。これに対してコジェネは発電の時出る熱を給湯や暖房などに利用するため、発電自体の効率は25%でも残りの熱をできるだけ使うと70%~90%の総合熱効率になります。つまり小規模なコジェネを使った発電システムは発電に伴って発生する熱も捨てないで使い尽くすので、大規模な発電所より2倍以上省エネで環境に優しいということになります。

そこで今計画している藤沢育成会の新しい施設の建設に際しては、エネルギーコスト、環境負荷が小さく、電力のピークカットに協力すること、停電時の対応、電力(夜間電力)・ガス・軽油の値上げの動向、災害時への対応などいろいろと考慮して、「ジェネシス」というガスエンジンによるコジェネの導入を検討することにしました。この方式では、通常なら捨ててしまう熱をどれだけ利用し尽くせるかが、ポイントですが福祉施設ではお風呂が大きかったりするので熱としての利用率もかなり高く、この程度の規模の施設でも総合熱効率が80%くらいという事になりました。もう少し規模の大きな工場などではガス吸収式冷温水設備を使い、冷房もガスエンジンの排熱を使えるので総合熱効率は90%以上、もっとコストが安く環境に優しいエネルギーを使うことができます。

このほか、今度計画している施設は、建物全体の断熱性能を高める、太陽熱利用の床暖房なども併用することで、施設全体で使うエネルギーコストが半減するという試算結果になりました。設備など初期投資はオール電化よりちょっと高いくらいなので数年足らずで元が取れることになります。

今、東京瓦斯の技術陣と設備設計事務所が協力して熱心に検討を進めていただいているので、今度の施設は省エネ、創エネの面でも満足度の高いモデル施設になりそうです。
もしわが国でも広範な地域でこういった取り組みが進めば、安全性が確保できないままの原発を再稼働させるよりも短期間で当面の日本のエネルギー問題は解決するのではないでしょうか?

この施設が完成したら、建物の美しさや地域に開かれた作り方だけでなく、福祉施設の省エネと創エネのモデル的事例としても注目されることになると思います。

 

図1 家庭用コジェネの仕組み(ホンダコジェネレーションユニット資料より)

図2.jpg

 

 図2 工場などではガス吸収式冷温水機で冷房もできる(東京ガス資料より)

図1.jpg

 

 

ページトップへ