あけまして おめでとう ございます

FullSizeRender.jpg新年 あけましておめでとうございます。
昨年11月21日に着任して2か月目を迎えました。初めての日記です。たくさんの人たちにお会いしました。しかし、まだまだお会いできていない人たちがたくさんいます。300人以上の人たちが当法人内で仕事しています。お互いを知ることもなく仕事をしていることもあります。それでも日常的な仕事は滞りなく進んでいます。元旦を職場で迎えた方もいます。ご家族とご自宅で迎えた方もいます。旅先で迎えた方もいます。これだけの人たちが働く場ですから、いつ何が起こっても不思議ではないと思っています。それだけに毎日の無事がとても大切に思えます。今年も365日、日々の無事を積み重ねていきたいものです。

毎日を積み重ねるためにはどうしても必要な考え方があります。それは"リスクとの共存"です。多くの場合、リスクを未然に防いで事故を防止しなければならないと考えるようです。しかし、日常生活にリスクを完全に消し去ることはどう考えても難しいのです。であるならば"リスク"から逃れようとするのではなく、"リスク"と仲良くなってしまえと考えています。自宅から通う、グループホームに住む、施設で暮すなど、暮らし方は様々ですが、日常生活を過ごすといろいろなリスクが伴ってきます。仕事に行く、事業所に行く、日中活動に行く。どれをとっても毎日の暮しにはリスクがあるものです。消すことが一番良いかもしれませんが、そうはいかないのが現実です。そうならばリスクと仲良くなって暴れ回らないようにさせてしまおう...と考えているのです。

そのために多くの施設では"ヒヤリハット報告"をやっています。この「ハインリッヒの法則」は、畑村洋太郎さんの『失敗学のすすめ(講談社)』によって定着した考え方です。もともとハインリッヒの法則は生産工場で起きる事故をもとに考えられましたが、社会福祉領域でも定着しました。1件の大事故の下には29件の事故があり、300件のヒヤッとしたハッとした出来事があるというものです。したがってヒヤリハット報告をすることで29件の事故や1件の大事故を防ごうという考え方です。これは事故が起きる可能性が必ずあるという考え方が根底だと言えます。しかし、ヒヤリハット報告をするとそれで終わってしまっていないだろうか。ヒヤリハット報告が目的になってしまって、何を導き出すか判っていないデータともいえないものが多く見えます。

最近はマニュアル社会と言われています。"マニュアルがあるかないか?""マニュアル通りやれているかどうか?"と聞かれることが多くなり、ファーストフードチェーン店ではマニュアル通りやらなければアルバイトも首になりかねない勢いです。笑い話のようですが、幼児に向って"○○キャンペーン中です。××はいかがですか?"と聞き、当たり前のようにやり過ごす店員がいます。マニュアルは万人に向けたサービス提供を考えているから、年齢などお構いなしです。同じように高年齢者の中には少量しか食べてはいけない人がいるにもかかわらず購入を勧め、結局食べ残しを増やす結果をもたらしても気にも留めません。何が大切で、何が無駄なのか考えることもないのです。この結果、クレームが来ても不思議ではありません。"子どもに何を言ってるんですか!""おばあちゃんは糖尿病なんです。食べられないんです!"。マニュアルは全体に通用するものを言っています。マニュアルは最低限度の保証を訴えています。

かつてアメリカの精神科病院が入院患者の地域生活を進めるために大量のソーシャルワーカーを必要としました。しかし、そんなに多くのソーシャルワーカーは急に育てることが出来ないため、ソーシャルワークを概説し、最低限度の仕事が滞りなく進められるようにマニュアルを作り、それが理解できているかどうかで資格者としたのがケースマネージャーと呼ばれました。地域福祉推進の拠点にはセンターを作りました。それが精神保健福祉センターですが、地域の距離も規模も日本の現状と異なって限定的です。そこに集められ個別支援を支えたのがケースマネージャー、日本では"ケアマネージャー"と呼ばれています。マニュアルが判っているかどうかは、最低限度であって本物はその先にあります。その先は社会福祉の根幹である"個の尊重"が出来るかどうかです。そこではマニュアルどおりおばあちゃんに食事を勧める姿はありません。なぜなら一人ひとりの状況やニードに応じることが出来て、初めて最低限度を脱する事が出来るからです(『ソーシャルワークの固有性を問う』晃洋書房、西尾祐吾編)。

これが私の考えている"リスクとの共存"です。もうお判りいただけたと思いますが、最低限度のマニュアルで満足した業務は、個別の状態に応じることが出来ていないので、ほころびが生じる可能性を増やしているという事です。そのほころびを出来るだけ少なくしていく努力が"リスクとの共存"です。個別支援を基本とする職場で当たり前とお考えかもしれませんが、マニュアル止まりでしかない仕事は山のようにあります。その中でうごめいているのが大事故の種=ヒヤリハットです。マニュアルはどうしても必要な時代になりましたが、マニュアルで満足することなく、自分自身の仕事の奥深さを探検してみませんか。それぞれの職種、それぞれの職場、それぞれの事業の中に潜んでいる"種"をマイナスと考えずに、プラスにする"チーム力"を培いたいものです。新年に当たり、今年の仕事への"意思"としたいものです。

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