コミュニケーションの障害

「これまでお母さんはいつも怒っているんだと思っていました。でもコミューンで初めてお母さんの声を聞いたとき、とても優しい声だと思いました。」新聞に載った難聴男子小学生の作文。お母さんは涙を流しながら読んだそうです。聞こえやすくするために大声で話していたので、怒っているように聞こえていたそうだが、小さい音を拾いやすくするための機械・コミューンによってお母さんの本当の声を聴くことができた少年の作文。どれだけ心を開き、通い合うことができたのか...と思う。

障害者と言えばバリアフリーとなり易いが、実は多くの障害者がコミュニケーションに悩む。聴覚障害者はコミュニケーション障害などと言われることもあり、"聞こえない"ため情報量が極端に少ない。肢体不自由の場合はマヒによって言語不明瞭になり、伝達の困難に直面する。もちろん、聴覚障害者は"手話"によって情報の交流を図るが、高齢難聴者で手話を使える人は少ない。だから手話通訳の他に"要約筆記"を付けた講演会がある。手話を使える人がどれだけいるか考えれば判るが、手話は手話を使える人だけの言語。外国語と同じレベルで考えると、判らない言葉の国で暮し続けることと同じ。外国語なら聞きなれることでカタコトが使えるようになるが、聞こえない人は改善する余地がない。障害とは"症状が固定している状態"を言うと定められているから。

一方、言葉が聞こえていても言葉の意味が判りにくい状態で暮している人たちがいる。知的障害者、精神障害者は、質は異なるが、この問題でコミュニケーション障害となる。精神障害者の場合は聞こえるはずのないことが聞こえる"幻聴"に悩まされコミュニケーションを難しくさせる。知的障害者の場合は、一般的な言い回しであっても慣れない言葉があると混乱し判りにくくなる。TEACCHの"C"は"コミュニケーション"・ハンディキャップ。「自閉症やコミュニケーションに障害のある子どもの治療と教育」。つまりTEACCHはコミュニケーションを問題視している。コミュニケーションが不十分であるという障害は、相手の理解だけでなく、置かれている状況など暮らし向きのすべてにハンディキャップをもたらす。だから、"わかる"だけでなく"できる"ように支援するのが肝心。冒頭の作文はそこから解放された喜びが表れている。そこにコミューンという道具が活かされた事例。知的障害や認知症などによってコミュニケーションに障害がある場合のコミューンが私たちの仕事。(2016.6

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