マニュアルばやり

6月にコミュニケーションは"意"が伝わらないとコミュニケーションにならない...というようなことを書いた。中身が判らないと「コミュニケーションが言葉のキャッチボールだ!」と言えないという意味だ。幼児とキャッチボールする時は誰もが下から取りやすいボールを投げる。高齢者との場合は、相手の様子を見てその人との受け取れるボールを投げる。高齢者だからと言って、最初から緩やかなボールを投げると"そんなボールしか投げられないのか!"と叱責を頂くことがある。優しさが仇になることがある。たとえば、腕に覚えがある元高校球児だったら、プライドを傷つけられたと思うのもうなづける。だから、人を援助することは難しい。

天声人語(2016.5.29)に興味深いことが書いてあった。新幹線や飛行機でのリクライニングシートは後部座席の人に迷惑にならないように気を使うもの。それに気づいた観光バスの運転手が「後ろの人が気になって倒しにくいってことありますよね。あとくされのないように今一斉に倒しましょうか。はいドーン!」とアナウンスしたところ、乗客が笑いながら、思い思いの角度に倒したそうだ。外国ではこのことでトラブルがあり、座席を倒せないように改造したところがあるという時期に。マニュアルに書いてあるわけではなかった運転手の機転がバスの中の雰囲気を一変させる。一方通行のコミュニケーションのように見えるが、発信者の運転手が、受信者の心を熟知した発進であったために、充分なキャッチボールが出来ている。見事な接客で、素敵なコミュニケーションだと思った。

最近、ファミレスなどで聞き取れない言葉の店員に出会う。早口に慣れないだけでなく"意"が見えないのである。マニュアルにある言葉をそのまま発信していると、発言している人の心がどこかに行ってしまう。ファーストフード店の接客で幼児に向かって"○○キャンペーン中ですがいかがですか!"と話しかける店員。困った顔をする幼児...。バイト学生はマニュアル通りやるように言われているから仕方ない...とはどうしても思えない。コミュニケーションはキャッチボールだ...という言葉の中にそっと"心"入れて、コミュニケーションは"心と心をつなぐキャッチボールだ!"としたいな...。知的障害のある人たちも"心"が通うとホッとした表情を見せてくれる。マニュアルは必ずしなければならないことが示してある。そこからスタートして、ケアする側とされる側の相互性が味付けをする。相手のことを考えたマニュアル使いをしたいものだ。(2016.7

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