マンションから戸建てに移り、終の棲家と思って住み着いた家で雨音に驚かされた。遮断された空間のマンションでは、こんな雨音に出あわない。隣家はそれほど気にはならないが、ちょっと出ると会話になる。ありがたいことにごみの出し方など日常的なことを教えていただき"お隣さん"を感じる。マンションなら"管理人さんに聞いてみよう!"...だろう。"これが日常の風景..."と思う。"日常"には、沢山のことが詰まっている。慣れればどうという事はないのに聞きたいことがある。立ち入った話はしにくいが、ちょっとした話はお隣さんに聞きたくなる。しだいに、ちょっとしたことからそれなりの内容を相談する親しさになる。「遠い親戚より近くの隣人」だ。決して答えを求める相談ではないが、心が穏やかになったり、その場が違って見えたりする。それが先輩や上司であっても同様だろう。親友になるとさらに膨らむ。
"相談"は私たちの仕事の日常にある。"相談"を仕事としている人もいる。経験上、相談は専門性と日常性の微妙なバランスの中にあったと思う。それが社会福祉領域の"相談"。日常の中には専門家でなければ出来ない"相談"はそれほど多くない。「計画相談」がある。元々、相談は計画するものではなく日常の中で発生するもの。障害者だから相談を必要としている訳ではない。障害が変化するのでもない。年齢や環境と共に日常が変化するから相談の頻度が高くなるだけ。その時必要なのは療育技法の伝授ではなく、心穏やかに、少し違って見えることだ。だから"○○をしてあげる..."ではなく、本人や家族に"寄り添う"こと。つまり、相談は"日常の支援"に内包している。場面を切り取ってバイスティックの7原則通りに出来るものではない。寄り添うことから始まる相談は、今貴方が居る場にある。
専門相談を否定している訳ではない。専門相談には奥深い意味がある。障害者支援では「自己決定支援」が定着した。本人の意思を尊重し、本人が決定できる支援が求められている。それは親、きょうだい、支援者の意思が介入する可能性を意識しなければならないという事。だが、日常はみんなが影響しあって成り立っている。だからソーシャルワーカーは、代弁者、媒介者、治療者の役割がある。本人の意思を尊重(代弁)し、家族等との仲介役を担(媒介)い、課題の解決に向おうとするエネルギーを育む力量(治療)を持たなければならない。だからニードを見極め、アセスメント出来る相談技術が必要になる。つまり日常を超えた"場"で日常を解析し、本人自身が問題解決を図ろうとするように促せなければ"相談"とは言いがたい。日常的過ぎてもダメ、非日常になってもダメ...奥が深い。イングル―ジョン(包摂化)を目指す相談は、専門相談と同時に、お隣さんとの日常がないと成り立たない。支援者はいつも"お隣さん"のようでいたい。(2016.9)
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