以前から不思議だった言葉がある。"障害は個性"。個性とは「個々人に備わっている他から区別される固有の性質(例)個性を発揮する(国語辞典・小学館)」と。人は個性を話す時プラス思考でとらえていることが多い。障害ゆえの個性とは何を指すのだろう...と考えると"障害は個性"と表現することに違和感を覚えていた。何やら危険な印象も持っていた。危険というのは、障害を個性と言ってしまう事で"ハンディキャップ"の意味するところを消し去っているような気がするから。しかし、障害を肯定的に見ようという社会的風潮が悪い訳ではなく、個性として捉えることを否定する必要もないので口にすることはなかったが、図書館で『障害は個性か(大月書店、茂木俊彦著)』に出会った。茂木俊彦氏は教育心理学者、障害児教育の専門家で多数の著作がある。
著書に「TEACCHプログラムの考え方を徹底していくと、学校だけでなく、家庭や地域社会も構造化すべきだということになるし、実際そのように主張する人も少なくない。しかし、そのようなことは現実には不可能だと言って良いのではないかと思う。(P84)」とあった。TEACCHは、だから①ライフステージにあったプログラム、②家族を療育のパートナーに、③地域を協力者にと言っている。完全に社会を構造化することは不可能であったとしても、出来るだけ地域で暮す環境を整えることを考えているということだと理解している。その先に"インクルージョン藤沢"がある。だからTEACCHはノースカロライナ州全体の取り組みでなければならない。つまり、障害者が社会に添うだけでなく、社会が障害者の住みやすい場になることも行わなければならないということ。
"障害は個性か?"とは、社会の中で障害がどのように理解されているかが問題視されている問いだと思う。同著に「だが、歌が上手、下手といったことと障害を同列に置くこの議論は、障害によって発生してくる困難、特別なニーズに注目させない方向へ人々の認識を誘導させ、ニーズに対応する社会的、行政的方策の立案と実施を回避する方向で、その役割を果たす可能性がある。(P32)」とあった。危険な臭いを感じていたのはこれだと思った。障害者が社会適応するためには2つの方法があると思う。一つは障害者自身の社会適応を出来るだけ高める方法。もう一つは社会が障害者適応の限界を超えた課題に応じられる寛容さを持つために社会自身が変化する方法。たとえば、バリアフリーを提唱し始めた頃の「神奈川県福祉の街づくり条例」では"障害者の住みよい街づくりは、誰もが住みよい街づくり"とした。すべてを構造化するのではなくても良い、ビジュアル化する量を少し増やすだけで良い。"障害は個性か?"の問いに内包する社会が成熟するための課題がインクルージョン藤沢に繋がっていると考えた。(2017.3)
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