久しぶりの直接援助業務は、福祉従事者としての原点を思い起させる刺激的な仕事だったが、転勤族は思い通りにはいかないのが常。再びの県庁勤務は前回とは全く違った。仕事はこれほど見る角度によって異なるのかと思った事がその後の見方に影響を与えた。
一番印象的な仕事は"計画作り"。この時期から社会福祉行政は「○○計画」に基づいて実施されるようになったのはご承知の通り。計画を創るためには、繰り返し検証した上で次代を予測したものでなければならない。それでも時代遅れになりかねないので中間で検証される。この頃注目され始めたのが"児童虐待"。児童相談所にいた昭和55年頃、年間に1件あるかないかの児童虐待が上昇の兆しを見せ始めた。廃止された日本子ども家庭総合研究所(旧愛育研究所)に通い、児童虐待の実態、今後の推移、そして福祉領域からのアプローチの手法など繰り返し教わった。亡き高橋重宏、庄司順一両先生との研究会はその後の姿勢を作った。当時は児童虐待をどう理解すべきかが課題。ネグレクトがまだ社会的に認知される前に"歯医者に行かせてもらえない..."は虐待かどうか議論した。今でもグレーゾーンに当たる事象を検討し、児童相談所における児童虐待対応の基礎が生れた。一方で、「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」が批准された頃で、全ての子どもの健全な発育保障をどう担保するかも虐待の延長線上として議論した。一般的には児童虐待は遠い存在だが、延長線上に健全育成があると意識した『かながわ子ども未来計画』が策定された。その計画が実現、権利擁護システムが動き始めると"神奈川方式"と言われ、取り組みが紹介された(『子どもの権利擁護~神奈川県の新しい取り組み~』中央法規、高橋重宏編著)。
何とも言えない達成感を味わった計画作りは、社会福祉の仕事を推進するために欠かせないもので、将来を計る大切な仕事だった。平成に入った頃から、障害福祉計画にも"地域"という言葉が使われるようになったのは社会福祉法改正(旧・社会福祉事業法)にも"地域福祉の推進"が明記されてからだが、それは介護保険法(平成12年)や社会福祉8法改正(1990)、社会福祉基礎構造改革が制度化され、これまでの考え方では社会福祉事業を推進することが出来なくなった。同時に現場では"当事者主体"の考え方が定着した。これらは社会福祉が"施し""慈善"的考え方から脱却する動きになり、社会福祉が社会防衛的考え方から利用者主体にイノベーションする方向を決定的にした。制度と直接支援、方向性を見誤らないところに本物の社会福祉の創造があると実感した"計画作り"だった。インクルージョン藤沢にイノベーションするためには、ネクストプランⅡも繰り返し同様の検証を必要としている。
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