行政と現場を往復し視界が広がっていのを実感できるほど余裕はなかったが、次第に広角的に社会福祉を観るようになった頃、介護保険施行時の特別養護老人ホームに転勤。介護保険は社会保険を導入し、これまでの考え方からイノベーションするものだった。理念的な"個の尊重"や"利用者主体"を具現化したものが"措置から契約へ"などになる。行政処分の"措置"ではなく選択できる"契約"になってサービス料を支払う。それが利用者主体を体感させたが、不十分な応益負担が応能負担と混在して中途半端だった。その後障害者自立支援法で受益者負担が混乱を招いたのはここが伏線だろう。経済的負担が重くなる対象者に経済的保障をする前に受益者負担を求めたからだ。軽減措置をどれだけ行っても社会的承認が得られなかったのは経済給付(ダイレクトペイメント方式)等の検討が不十分だったらだと思う。
それでも、介護保険導入によって社会福祉の変化に拍車がかかり、今では当り前の利用者と介護者≒福祉従事者の関係が縦から横に変化した。特養ではその具現化が求められた。しかし、これまでの条件とほとんど変わらない現場はどうすべきか判らず混乱した。検討の結果、より丁寧な支援をするために考えたのが"小グループ化"。知的障害者施設では諸条件が整わず断念せざるを得なかったのに実施した直後だった。そこは不十分な建物設備や職員数等のままの実施で混乱していた。収拾しようにも賛成派、反対派、横睨み派と継続の是非を判断する状態ではなかった。それなのにほぼ100%の身体拘束など早急に解決すべき課題が山積。家族は預かっていただいている...との思いが強く、拘束は必要だとし、小グループ化の意味は理解不十分な状態だった。覚悟を決めて、どうすべきかを選択する会議を設け職員と協議したが、問題解決の糸口を見出すことは出来なかった。そこで無理をしない...と決め、建物等の条件に合うものにし小グループ化を断念。それよりもやるべきは事故を少なくすることと決め、ハインリッヒの法則に基づくヒヤリハット報告を徹底した。1年目はデータにもならない状態だったが2年目に検討素材となり、危うい場を整理すると職員側から身体拘束解除の案が次々に出た。3年目にはデータ分析を行いながら身体拘束は100%廃止できた。
時代は社会福祉の考え方を大きく変え、直接援助の考え方、手法も大変革の時を迎えていた。制度が現場を変えるのか、現場が制度を変えるのかというと、日本の場合は制度が現場を変えることが多い。この頃、障害者が"制度が変わるたびに僕の暮らし方が変わる..."と嘆いたが、地域福祉はソーシャルアクションが伴わなければ具現化できないし、活動的にはならない。社会福祉法人はこれをベースにした事業展開が必要だと自覚したい。(2017.12-②)
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