子どもの頃、黛敏郎(作曲家)の司会で日曜の朝に見たい番組があった。ただチャンネル権ランクが低いのでたまにしか見られなかったのが「題名のない音楽会」。長く出光興産が協賛し、佐渡裕(指揮者)、五嶋龍(バイオリニスト)などが司会者だった。今はミュージカル俳優の石丸幹二が担当している。芸大出身らしくクラッシックにも造詣が深い。毎回テーマを設けた30分番組だ。ブラスバンド部でトランペットを吹いていたので金管楽器に目が向く。また耳にも良く入る。トランペットは3つのピストンと唇で音を変えるが、ある時ピストンを動かす手に違和感をおぼえた。従来のものではなく、ラッパを横に持って押している。このようなピストンをホルンでは見るがトランペットではなかった。トランペットも時代と共に変化する...と思った。
オーケストラを眺めると、右後ろに並んでいるコントラバスが左後ろに。右前列に並ぶチェロが第2バイオリンの横手、右前列にビオラ、並び方も違う。曲によって変わるのは当然なのか...。そうか、楽器編成も曲によって異なるから必然なのだろう。そういえば黛敏郎作曲の「涅槃交響曲」は、金管楽器は2階客席から演奏する指示があると聞いた。楽器編成だけでなく、着席位置まで異なる場合もある...と思った。
クラシックでも時代と共に変化する。作曲者の意図とは別に指揮者の解釈が加わり、演奏家の考え方や技量によってさらに変わる。古典と言われながらも変化し続けているのだと思った。そういえば、あれほど伝統や格式が重んじられる歌舞伎も「スーパー歌舞伎」というジャンルが出現し認知されている。また、絵画では作者が亡くなった後に評価が高くなる場合もある。時代の変化とともに、変わらないと思っているものでも必要な変化がなければ世間から受け入れられなくなるようだ。
変わってはいけないと思っているものでも、これまでと同じでは時代から取り残される。現状より少し前に出て新しいことを考えたとしても、今を維持するのに汲々とすることもある。どんなに評価されても、評価されたその時点で陳腐になってしまうものもある。
"支援"と言う仕事は、利用者の生活をそんなに急激に変える事など出来ないから、変化しないように対応するのが一般的。しかしトランペットのピストンが変わるようにいつの間にか変わっている状態を意識して受け入れなければ今を維持することが難しい。その時、何が残っているか...。そこが原点、変えてはいけない要素がある。その原点を取り巻く何かが時代とともに変化する。新しい年を迎える時に心新たに変わるものと変わらないもの、そして変えてはいけないものを見極めたい。それぞれの事業も時代とともに変化するのは必然と見て、時代に添う改善策を常に考えたいものだ。(2018.1)
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