社会福祉事業はチーム力だと学んだ特養での施設運営の次は児童相談所。児童虐待の相談件数が急上昇し、虐待死事件等が社会問題となっていた。"児相が関わっていたのになぜ!""児相はなぜ保護しなかったか!"など糾弾する記事が繰り返された。しかし、児相では家庭内の密室で突然の感情が引き起こす事、親権という壁、しつけと虐待の狭間、職員不足等が問題だった。加えて社会の理解と現実との乖離があった。そのため職員が頑張っても成果は上がらずモチベーションが下がる実態を見た。児相≒相談の仕事は1人作業が多くチーム意識が持ちにくいので、SW、心理士、医師、保健師など専門領域の融合が非常に大切で、孤軍奮闘しない、させない環境を作ることが大事だと考えた。
児童福祉司から報告があった。3人姉弟のお姉さんからの相談は中学校訪問時だった。毎日、鍛練を強要される弟たちが可哀想で何とかしたい...と。どう考えても児童虐待で保護するまでに至らないが、子どもたちが疲弊する事実は見過ごせない。調査すると母親がDV被害の疑い。大ケガはなさそうだが行動制限、金銭的な締め付けなど気がかり。更にケアマネ情報では寝たきりの祖母が褥瘡を作って寝かされっぱなし...。児童虐待では保護できない。DV被害で自己申告は難しそう。当時の理解では祖母がネグレクトだとも言えず。どうにもならずに遠巻きに見守り、何かあった時の対応の準備をする児相の限界を感じた。
虐待関連法は、児童虐待防止法、DV防止法、高齢者虐待防止法、そして障害者虐待防止法とあるが、包括的な虐待防止法はない。それぞれの定義を見ると暴力だけで定義せず、性的、心理的そしてネグレクトが基本。子ども以外は金銭的搾取が加わる。人権侵害だから共通するのは当然だが、相談機関も対応も判断基準もバラバラ。縦割りの弊害だと言わざるを得ない。それが現場の限界を作る。多様な取り組みで改善を図った児童虐待から見ると高齢者虐待等の認識は大きく乖離している。"人権侵害"と考えればネグレクトの捉え方に乖離があってはならないが現実には差がある。制度がサービス受給者の生活を変えてしまうほど影響があるにも関わらず、それぞれの制度で理解に乖離がある。事例のような可能性は十分考えられるのに制度上単一の対象にしか向かえない。制度と現実の乖離を実感した。日本の福祉は対象者別に考えられてきたが、今後、人権等の軸を作って再編しなければならない。ピンポイントのサービスだけでなく、家族全体を包括的に相談出来る体質、親子が共に暮らせるサービスなど輻輳的な支援を考えなければサービスはあるが成果はまだ...という結果になる。サービスの成果は、サービス提供者の満足で終わるのではなく、サービス受給者のもとで花開かなければならない。ただ、これが出来る職員は相当な力量が必要だろう。そのための職員養成を行うべきだ。
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