"障害者"に変化はないが時代と共に周囲が変わる。その様子が物語などに反映する。日本最古の障害者の記述は『古事記』。イザナギ、イザナミの子として誕生した"ヒルコ"の話。"ヒル"は"蛭"。葦舟に乗せられ川に流された。葦はパピルス・植物である。古代、神様の子でも障害児は捨てられた。ゆえに古代は「遺棄・抹殺の時代」と言われ、中世に「慈悲・嘲笑の時代」に。映画「エレファントマン」はご存じだろうか?象のような顔(奇形)の青年はフードをかぶって街を歩くがいじめられ罵倒される。それでも生きるために見世物小屋で姿をさらす。その後、教会の庇護を受け塔の最上階で暮し安寧を得た。
時代が変り近代は「保護・教育の時代」となる。たとえば視覚障害者が使う"点字"は、17世紀フランスのルイ・ブライユがモールス信号をヒントに凹凸で表現した文字。もちろん日本に点字はなかったが、世界的に珍しい職業団体があった。ご存知の"座頭市"はこの組織の一員。個人名は"市"。組織内の立場=地位が"座頭"。江戸時代の検校を筆頭とした視覚障害者の組織である。本業はあんま=マッサージ業。夜な夜な笛を吹いて客を待つ。夜の仕事は多様な人間模様を知ることになり、裏稼業として金貸し業が生れた。取り立てを生業とする市は恨まれ役だから抜き身を持ち剣の達人となる。それが物語・座頭市。もちろん悪徳検校ばかりではなく、『群書類従』を書き上げた国学者・塙保己一などもいた。
現代に入り障害者の権利擁護が当然となる。しかし、第二次世界大戦前は一般的理解ではなかった。ナチスドイツの優生思想が相模原事件で話題になったが、理解はまだまだ不十分だった。だから、第二次世界大戦が終了しようやく「人権擁護・共生の時代」に入った。1947年の国連の人権宣言から2006年の障害者権利条約に至るまで歩み続けてきた。理解が進むと当然だったことがダメだしされた。例えば、童話「ピノキオ」は知っている人と知らない人が、みごとに世代で別れる。なぜなら、突然障害者差別を助長すると排除されたから。木で作られたピノキオが、おじいさんの言いつけを破って大冒険。かたわ(肢体不自由)の狐にだまされる。それが障害者への差別感情を助長するとされた。障害者観は時代と共に変容してきた。古代、障害者は生きにくかったが、中世には保護、庇護の対象に。近代は教育対象となるが人権意識はまだまだ。長いスパンで概観すると障害者が人として暮らせるまでの積み重ねが見える。来年は法人設立30周年、活動開始から50年。半世紀の間に大きな変遷があった。これからは、人権擁護を声高に叫ばなくても当り前に地域生活が出来るように積み重ねる時だ。(2017.12.1)
※"かたわ" は差別(不快)用語ですが、当時の理解を再現するために使用しました。
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