「不毛な心配やめる それもスキル」の見出しでスポーツ心理学者の荒木香織さんの記事があった。「よく平常心で臨めとか言いますが、理にかなったアドバイスではありません。むしろ、適度な不安や興奮があって『あれをやりたい、これをやりたい』と自覚しているほうが良いパフォーマンスに結び付くといわれます。W杯にラクビー日本代表が出場する際にも『不安や緊張は当たり前。それを感じることは、むしろ良いことなのだ』と伝えました。」"ルーティンの五郎丸"で一躍ラクビーをメジャーにしたあの時だ。"適度な不安や興奮""あれをやりたい、これをやりたい"...同じだと思った。初めてのことは不安に思うのが当り前。職場の昇格や異動、重い役割を担う時など不安は当然。そうやって新しく挑戦するといつの間にか出来るようになり楽しくなる。逃げまくったり、避け続けると、いつまでも追い掛け回され押しつぶされそうになる。だから"あれをやりたい、これをやりたい"と思える"心"を持ち続けたい。それは人が成長する時だ。ヤドカリのように器が次第に大きくなると、苦手や苦しみが不思議と消え、安心して出来るようになる。すると、これまで見えなかったことが気がかりになり、事前に心配事の種を摘んだり、うまく育てられるようになる。人の持つ力量はそれほど変わらないから、その時のチャレンジ精神、ちょっとした勇気が化学反応を生む。だから"不毛な心配やめる それもスキル"に納得。
京都大学学長山際寿一(霊長類学)と京都市立芸術大学学長鷲田清一(哲学)の対談『都市と野生の思考(インターナショナル新書)』に素敵なエピソードがあった。火山爆発予知を研究する学者が研究成果を生かし予知したが不発。避難生活をした地域住民は、多く日常が壊され右往左往しただろうに非難や苦情はなし。なぜなら、日々昼夜を問わず観測に費やし、繰り返し登山する研究者の努力を知っていたからだった。嬉しくなった。どんなに頑張ってもすべてが思い通りにはならない。とりわけ"支援"は事故が付きまとう。周到な準備をしても出来ないこともある。だが、そこまでに費やした時間がどれだけ充実していたかが問われる。その実態は"誠心誠意"。苦情解決制度があるが、"支援"は支援する側と受ける側の相関関係。更に出来ることも出来ないこともある。だから、折り合うには"誠心誠意"が重要。仲裁者がいなければ解決できない苦情は、発生した時点で支援する側の誠心誠意が不足したか、伝わりにくかったか、空回りしたかだと推量できる。学者に住民から苦情がなかったのは"誠心誠意"が十分伝わっていたからだと思えた。
だから年度末に伝えたいことがある。昇格した人もしない人も、異動する人もしない人も"適度な不安や興奮"は当り前と考えよう。むしろチャレンジするわくわくした気分と考えよう。最初から何もかも成功するなどと考えなくていい。だが、何事にも"誠心誠意"取り組む姿勢を忘れずにいて欲しい。人生は"あせらず、あわてず、あきらめず""ゆっくり、じっくり、しっかり"...いこう。(2018.3)
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