前回もそうだったが1ページすべて使った新聞記事がある。その特集に『「印鑑社会」は変わるか』とあった。中央に印鑑を持つ手、下に"タブレット端末でのサイン"と"ICカードを使った電子署名"の絵。文章は右半分が「月刊 現代印章」の編集長、左半分は弁護士で両論併記。こうした記事が今の新聞の特徴のようだ。以前は新聞が速報性のあるメディアだったがテレビに奪われた。ライブ、映像付きでお茶の間に届く道具に速さ、臨場感共にかなわない。だから、テレビでニュースを見る人が増えた。
それでも、忙しい朝にテレビを見る時間がない人は、満員電車で窮屈そうに新聞を広げたが近ごろは見ない。もちろん、本を読んでいる人も見かけない。"若い人は、新聞も本も読まないのか..."と思っていたが、情報媒体が多様化したからだとようやく判った。よ~く見ると判るが、タブレットやスマホを見ている人の動きが目的、用途によって違う。ゲームに夢中な人の隣に座ると悲惨だ。何故なら、体をゆすりせかせかと操作するので振動が伝わり落ち着かない。他にほとんど作動せず凝視している人。この人はイヤホーンをつけ映像を見ている様子。指が上下動している人は好みの記事を探す...。これまで本を持つ以外小説など読めなかったが、電子図書もあるから単純に活字離れとも言えないようだ。
現代ではホットな報道の最右翼は電子媒体。振り返ると確かに種々電子媒体で読む。天気予報は確実に電子媒体が好み。何故なら欲しい情報の地域、時間、時期が選択でき大変便利。興味あるニュースに出会うと関連ニュースも併せて見るためには電子媒体が効果的。それでも紙ベースで見ると安心して情報確認が出来ると感じるのはいよいよ高齢者だな...。こうなると新聞の役割、価値が変化し、ニュースの深堀り、周辺情報も含めた報道で新たな新聞の価値を探っているようで、特集記事を好んで読み始めている。
そんな折『サボリのススメ』があった。八重洲地下街相談役、雇用ジャーナリスト、元プロ野球投手・解説者の三者の意見だ。元プロ野球投手はメッツでも活躍した小宮山悟氏。そこに「一生懸命やり続けることがベストでしょうが、坂を上っているつもりでペダルをこいでいても、いつの間にか下り坂になっているかもしれない。」「自分の立ち位置を見渡せる踊り場のような状態が必要です。」と。ただ頑張る時代は去り、自分自身を振り返る時間が必要だという考え方。我を顧みず頑張っていると自分を見失っていることすら気づかず精神的にも追い詰められる時がある。だからサボリの勧めという"働き方改革"の提案。印鑑社会が変わることも、新聞の価値が変わることも、働き方改革に"間"の大切さが入るのもかつては思いもよらなかった。少しずつ、緩やかに、しかし、しっかりと社会の変化が訪れていると、じんわり感じた。(2018.6)
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