不思議だが昔からNHKの朝ドラファン。「たまゆら」や「おはなはん」を知る人はいないと思うが「おしん」は記憶にあるだろう。時代の女性像や家族像を映し出す番組だと思っている。「おしん」のサクセスストーリーは発展途上国でも人気だった。"頑張れば..."の写し鏡だろう。変化の兆しは「青春家族」。石田あゆみがキャリアウーマンを演じ、息子に子役の稲垣吾郎、姉はパルムドールに輝いた「うなぎ」の清水美沙。初めて"離婚家族"を描いた背景に離婚率の上昇があった。最近はウイスキー、ベビードレス、お笑いと企業史が続き、新たな事業展開を希求する現代が透けた。今は「半分、青い」。漫画チックな作風やリズム中心の主題歌に時代を感じる。初めて障害者がヒロインとなった。病で左聴力を失う。障害者と言っても法的には障害者ではない。身体障害者福祉法では軽度でも片耳だけの聴力障害は対象にならず手帳はない。障害が確定し、受容に苦しむ家族とそれを気遣う主人公(子ども)。その時の言葉が"半分になっちゃった"。だが家族、仲良し町内会に育まれすくすく成長。しかし、就職戦線で挫折。13か所ことごとく不採用。ようやく合格した農協は祖父の口添えがあった。ところが突然現れた著名漫画家の勧めで東京へ。
東京行きを決める時の家族の話合いが"障害受容"。母親は言うまいと思っていた祖父の後ろ盾を話す。主人公は"知っていた!"と返し"左耳が聞こえないことを隠して合格したくない!"と。おろおろする親たちを慰め励ます良き隣人。ヒロインの葛藤を見守る幼なじみ。失礼だが左耳が聞こえないことでここまで葛藤し障害受容に苦しむ様子で想像しがたい"心"が映った。障害が重い人、その家族はその"時"をどう乗り越えたのか...。就職試験の不合格=採用側≒社会の偏見と言わないまでも、それらしいニュアンスを醸し出すセリフ、映像、登場人物それぞれの立場の演技がそれを表した。社会は、法的には障害者と言えない状態でも"違う人"と見る。仲間として受け入れるには、社会が作り上げた"壁"をクリアしなければならない。壁は、障害が創るのでなく、社会の偏見等が作る。初めて障害者がヒロインになった朝ドラは、感性で障害者差別を映すが、自覚のない人にはどう映るか...。ハンディのある人、周辺の人たちの葛藤はすべては判らない...。だが、社会が取り除く意思を持たねばいつまでも"壁"が残る。でも大丈夫...。東西ドイツの"壁"=ブランデンブルク門を壊す若者の姿を思い出す。"壁"は今と次代を遮る障壁。だから、恐れて何もしないよりは、しっかりミッションを感じ前に向かう。なぜなら壁を壊した先にドイツ統一の時のように多くの人の当たり前の暮らしが誕生するから。それが本当の"合理的配慮"。そして障壁を壊す時、障害のある人々の葛藤が少しでも軽減できる...。そうありたい。(2018.7)
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