"ワールドカップロシア大会"はフランスの優勝で終わった。今回は予選突破以降の日本代表の成績があまりにもふがいなかったので冷めた気持ちだった。突然の監督交代、準備期間に更なる敗戦。いつまでも名の売れた選手に頼っているからだと思っていたが、これまでの西野監督なら何かやる...、だが、あまりに短い...。こんな時、監督はベテランをうまく使って新しい選手をかみ合わせるしかない。なぜなら新しい軸になる選手は簡単に作れないし、戦略戦術を理解するのも難しいから。
2得点した乾選手がインタビューで"前監督なら選ばれなかった..."と応えたのが印象的。Jリーガー唯一先発の昌子選手は今回初出場。日本では得点した選手を讃えるが、サッカー先進国ではポジションでの躍動を10点満点で評価する報道がある。高くても8点止まりが一般的だが、ベルギー戦で8をたたいたのが吉田選手。負けチームのディフェンダーが8得点は珍しい。得点しなければ勝てないが、好守備に鼓舞され普段よりも強いエネルギーが発揮されるのは人間の常。故にベルギー戦で原口選手の得点が生れた。日本代表では見かけないが、ワールドカップではよく見る守備から一転加速度的な攻撃、得点。そこに一人一人の役割があり下支えがある。この時は柴崎選手。スルーパスの成功率が高くチャンスメーカーとして得点をお膳立て。前監督ハリルホジッチは"デュエル"を連発した。仏語の"決闘"だがスピードや縦の攻撃を意味する。柴崎選手のスルーパスは見事だった。
しかし、選手が仲間を信頼していなければ得点につながらない。柴崎選手なら縦にパスがくると信じ原口選手はまっしぐらに走った。それは"仲間を信じる力"。チームがバラバラでは出来ない。チーム内の信頼を生み出すために西野監督は本田選手と話し"チームが苦しい時に出てもらう"と伝えた。影響力の強いベテランをどう使うかは監督の悩みどころ。頼りたいが頼りすぎると後半息切れし、ワンテンポ遅いプレーで失敗。だから、先に監督の意向を伝え納得させる。チームの結束を図り方向性を浸透させ、組織力が+αを生むように図る。当り前だが理論的に正しければだれもが出来るとならないのが現場の現実。"出来る"と"判る"は決定的に違う。研修で判っても現場で出来ることはほんの少し。そんな時、悶々とした感情が影を落とす様子は見落とせない。技術委員長として日本代表を見続けた西野監督には判っていたのだろう。チームを再生するのは技術だけではない。スポーツライター二宮清純氏の『勝者の組織改革(PHP新書)』に日本の決定力不足は「"スキル=技術"はあっても"ウイル=意思"がない」と。選手の意思が強く働くように腐心した西野監督の勝利。リーダーシップは現場で頑張る人たちの"意思"を生かすこと。だからリーダーはスタッフと日常的に繰り返し会話すことから始まる。(2018.8)
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