インクルージョンは考えれば考えるほど答えが判らなくなり深みにはまる。それは人と人の相関関係だからたくさん想定できる。『ケアの本質(ゆみる出版、メイヤロフ著)』を読むと"ケアとは相関関係"が印象的。だからたくさんの"答え"ではなく、その人にどう"応え"るかではないか。障害者支援では"答え"ではなく"応え"を求めていると考えると判りやすい。その人との関係でどう"応じる"か、どこまで"応じられる"かである。
ケアマネジメントは"アセスメント"を重視するが、ケアマネジメントが一般的になる前は"インテーク"と"ニーズ"を重視した。アセスメントを"評価"と訳すが、そのイメージは、テスト結果の良し悪しなどの"評価"が一般的。だが、アセスメントを"査定"と訳してみる。"査定"は、事前に価値を判断すること。ソーシャルワークの基本、バイスティックの7原則に"非審判的態度"がある。決して利用者の行為や状態を善悪で判断しない事。つまりアセスメント=評価は、善悪や良し悪しではなく、相手の様子や状態を理解する事。また、ソーシャルワーカーがサービス対象者の理解に不可欠なのが"ニーズ"。その人自身が何を求め、どうしたいか...。問題解決を親や職員側の判断ではなく、相手の立場で"必要性"を考え理解しなければならない。自己決定支援と言うが、アセスメントやニーズが判れば"自己決定支援"になる。
これらはさらに奥が深くアセスメントを行う時に利用者が混乱していたら、自分では整理出来ない...状態。お金が欲しいと言うからお金を渡すのではなく、必要性を吟味し、何をどうやって、どこまで提供するか...、当事者以上に課題を理解し問題解決のプロセスを考える必要がある。利用者支援はこれほど奥深く幅広のテーマが潜んでいる。これを実践するためには、自分の考えではなく社会的な基準に照らし合わせる事。自分なら...ではなく、支援が社会的基準に添っていなければならない。
一方で社会的基準に照合して考えると、あれもこれも出来ない...。これが難問で出来ないものは出来ない...となる。かつて当事者から"僕たちは制度が変わるたびに暮らし方が変わってしまう!"と言われた。犯罪行為でなければやってみたいのだ。迷惑が掛からなければやりたいのだ。でも、サポートが必要な人は、制度が変わるたびに出来たり出来なくなったり...。「僕たちに危険を冒す自由を下さい」と言った人々は、違法行為を言ったのではない。同じように地域で暮らすという事は、これらを丸ごと包摂(インクルージョン)するという事。自己決定支援などと軽々しく言っているが、本当にその人のニーズを把握し、アセスメントを行い、私たちに危険を冒す自由を下さいと言わなければならない環境を承知し、制度と格闘して支援しているかと言えば到底そこには及ばない。これがインクルージョン。安易に、軽はずみにハードルを下げれば利用者にとても失礼だと思っている。(2018.8)
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