今年は猛暑で年を重ねた身には耐え難かったがようやく秋風を感じほっとした。夏は戦争の話がマスメディアで話題。日曜劇場は『この世界の片隅に』。戦中、呉市郊外の小市民の暮らし。押し寄せる戦争の影が暮らしを脅かす。"戦争は嫌だなぁ~"と思う。今夏災害にあった広島県呉は軍港だったから日常的に戦争の姿がある。いつもだが日本では戦争中のひもじさなど小市民の悲劇を映す。武器もない下級兵士の悲惨な死、敗走時の食糧不足や風土病、特攻隊と呼ぶ自爆。どれも戦争の悲惨さだ。だが、そこに駆り立てた国家、権力者、戦争指導者を視なくてよいか...。悲惨な状態になったのはなぜ...、なぜ戦争に向かったか...など無視していいのか...と。『それでも日本人は「戦争」を選んだ(朝日出版社、加藤陽子著)』は、当時を精度高く読める。注目はこの本が県内の高校生への講義という事。
新聞に"「従う快感」の怖さ知って"の見出し。"「ハイルタノ」行進 増す声量""やってやった感が出た""排斥の気持ち実感"と。甲南大学田野大輔教授(歴史社会学)のファシズム体験学習の様子。小さな声だった学生が集団行動に高揚し声が大きくなり、他者を排斥する行為に違和感が消える。集団は1人の時とは全く違った感情にいざなう。面白半分が次第にやってやった感になる。"ハイルタノ!"は、"ハイルヒトラー"を主宰する教授名に変えただけ。当時、日本はナチスとイタリアの同盟国だった。戦争の悲惨さを伝えるだけでなく国家の反省を含まないと国際的には認知されない。またもう一つの気がかりは日本が戦争の出来る国に変貌していること。さらに甲南大生が体験した従うことで人間が変わっていく恐怖。従順さは自ら考える力を消し浮遊してしまう。報道では日本人は自ら考え、発言することが苦手だと言われていることも含めて危惧を感じた。そういえばナチスの優性思想は、あの津久井事件の犯人の背景にある。人は優位性を誇示したがる。だから優位性が高い者がどう理解し検証し続けるかが重要。個人で何かをする時と、一体感をもって行う集団行動で、異なった感情が生まれる怖さ。集団とは...と考え込む。
社会福祉施設等を"全制的施設"という。刑務所、寄宿舎制の学校、軍隊など集団で暮す場の総称(『初めて出会う社会福祉』相川書房、西尾祐吾著)。スポーツ界のパワハラ、セクハラ事件も同質。これが障害福祉施設での虐待事件の根幹だ。集団になると思ってもいない行動をするのが人間。だから周辺の人達が客観化する場面を作る言葉かけが大切。それは"呼び戻す力"。でも、もっと大切なのは自分で考えること。考えることを止めると集団行動に簡単になびく。しかも"従う快感!"がある。考えることを止める行為は日常的にも、非日常的な場面でも同様に人間の行動を表す。楽しければいい、嬉しければいいというほど簡単ではない。日常的な場面で実行することが戦争を回避することだし、虐待行為に走らないことだ。(2018.10)
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