社会福祉法人藤沢育成会のインクルージョンは今...

 2018.11.22、社会福祉法人藤沢育成会は法人設立30周年を迎える。それより20年も前に活動は始まった。50年前<1968(昭和43)年>は、障害児教育はごく一部しか出来ていなかった。だから障害児の親たちは教育を受けさせたくて奔走した。10年後(昭和54年)「養護学校の義務化」となり、すべての子どもの教育を受ける権利が保障された。その頃、運動の成果として藤沢育成会の基盤となる「星の村共同作業所」が開設された。当時、法外事業として親たちが立ち上げた"地域作業所"が多く始動し、苦労して運営していた。療育よりも日中の居場所作り、作業内容より集う場だった。重い障害でも社会とのふれあいを求めた。作業が難しい人は、親たちの手づくり品を販売する場を居場所とし買い物客と交流した。当時の制度は施設内の安全・安心中心だった。

 2018.11.20、社会福祉法人藤沢育成会は、法人設立30周年記念式典を行う。これまでお世話になった人たちへの感謝の会である。感謝のしるしに生活介護事業の作業種の一環として作られたクッキーを手土産にする。職員、利用者の協働で焼き上げ、家族のご協力をいただいて包装した。この法人内で一番新しい施設を建設するための外部委員も交えた検討会議では"たまり場"論議が繰り返された。つまり、利用者、家族、地域の人たちが集い、言葉を交わし、何となく居続ける場="居場所"である。それが"だいちの森"=パン工房。5年目を迎え誰かいる場になった。グランドピアノも雰囲気作りを手伝い家族、ご近所さん、通りすがりの人が立ち寄りパンを購入し、軽食、喫茶を楽しむ。そこにパンを焼き、販売する利用者が往来する。だれもが当たり前に必要な時に必要なだけいられる場だ。利用者が地域で暮らすためにはとても良い考え方だった。複合施設のこの場は空間をしっかり区分したのでお互いに居心地が良い。プライベートゾーンとパブリックゾーンを仕切るだけではなく、グレーゾーンを使ったゆるゆるとした仕切りが大事。

 だが、インクルージョンに逆行する動きもある。例えば送迎。この場は幼児、生活介護事業利用者、そして単独型短期宿泊利用の利用者。土日の短期宿泊以外はすべて送迎がある。だが、幼児の支援は施設内プログラムだけではなく、親子通園はとても大切な療育。成人にはトラブルも含め通う途中の経験は、楽しくもあり、苦しくもある大切な時間。しかし、"完全送迎付き"でないと...の要望は根強い。一つは両親ともに就労していると送迎が難しい、二つ目は安全・安心に利用させたい、三つ目は制度的に...などがあるが、インクルージョンの視点から見れば残念な現実。あちらを立てればこちらが立たず...。インクルージョン藤沢を推進するためには新たな手法が必要。それが制度を切り開いた法人のミッション。インクルージョン藤沢の今は決して十分ではない。心新たにインクルージョンの道を"一歩、前!"に進ませたい。(2018.11

 

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