45年程前、児童相談所実習中の家庭訪問で土間に犬の首輪をつけ鎖につながれた多動な障害児を見た。忘れられない衝撃的な光景だ。その後、知的障害児入所施設で働き始めた時、施錠を受け入れざるをえなかった。半世紀ほど時間をさかのぼるとこれが現実だった。しかし、現代に20年も檻に監禁された重度障害児がいたことに驚き、許しがたいと報道された。その後NHKが詳細にレポートしたのが『"息子を檻に監禁"父が独白△衝撃の事件 障害者家族は』。父は"暴力がひどく、家族が傷ついている姿を見るにつけ安心して仕事に行けなくなった"と。当初は必要な時だけだったが次第に慢性化した。初期に市役所に相談したが満床で入所はかなわなかった。ここから三つの問題を見た。①行政の対応、②家族を見ない専門性、③支援のマンネリ化。
施設不足の時代だが、行政はなぜ受付もせず放置したか判らない。入所が厳しいからこそ必要性を把握し優先順位を付けた対応が必要。日常支援では特別な変化は起きにくいからこそ小さな変化を見落とさぬ支援が必須。これを家族だけで行うのは難しい。更に家族支援の視点。今も障害者だけを問題とする傾向があるが、障害者は1人では暮らしにくいのだから支援する家族支援等の視点は不可欠。檻に入れることが人権問題だという視点だけではなく、輻輳する課題をどこからどのように解決に向かわせるかが障害福祉。専門職制度が出来ても本物の専門職は育っていないと判る。社会福祉領域では積み上げた専門性が重視されるが公務員は転勤が必至。福祉職採用の地方公務員が少ない点も含め専門性を担保する環境がない。家族支援の視点を必要とする深い理解は至難の業だ。そして支援のマンネリ化。日常であるために風化させ捉えどころを失いマンネリ化を招きやすい傾向は施設でも日常化している。
同番組で兄弟家族が紹介された。弟は破壊行為等がある重度知的障害で自閉症。母親は失踪、父が他界した時に検討すべきだが入所施設は満床だと放置。NHKが市役所に取材に入ると即座に調査。本人が望んでいないため入所不可。兄が行方不明になればいい...と思ってみていると、兄がうつ病で入院して即入所。原因は家族支援の視点の欠如。だが、突然の転勤で担当した人が読み取れるか...。マニュアルがあれば...と言うが、マニュアルは人の心を斟酌出来ない。家族は自分の責任と思い込み泣き言を言いにくいのであらゆる角度から推し測らねばならない。熟練のSWでも見落とす可能性があるから社会福祉現場の多くが合議制である。そしてマンネリ化する支援。施設等で職員同士が利用者の話をする時、出来る、出来ないと簡単に話す。中には"子どもの頃から..."などと長い職員と利用者の関係の経験値で判った気に...。職員は善意で考えているから一層難しい。何事も"エビデンス"が大事。それは専門性の基礎がなければ出来ない。"檻に閉じ込めた"ことを問題にするのではなく専門性を担保することの問題だ。(2019.2)
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