千葉大学神里達博教授が「イノベーション政策~政府は主導より対処を」と書いていた。イノベーションは"新機軸"だから新しい軸でインクルージョン藤沢を実現と考えた。イノベーションはオーストリアの経済学者・シュンペーターが20世紀前半に提起し日本では「技術革新」と訳されている。だが、本来の意味はもっと幅広の概念だそうだ。例えばフィルムカメラからデジタルカメラ、そしてスマホの変化を言うそうで、「新しい財貨の生産」「原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得」「新しい組織の実現」等の産業を支えるシステムや基盤の変革にも及ぶ概念だという。それが"モノやコトの価値ある「新しい結びつき方」=新機軸=イノベーション。
"フィルムカメラからデジタルカメラ、そしてスマホ"を社会福祉に置き換えると"施設福祉から在宅福祉、そして地域福祉へ"と思った。しかもデジタルカメラからスマホの移行は非常に短く在宅福祉から地域福祉へ移行する時の短さと同じ。デジタル化された技術の延長線上だからアイディア次第で簡単に移行したのと同様、在宅は地域にあるから在宅福祉から地域福祉への移行は短時間で出来た。新機軸が現れるまでに時間がかかるがその後は速い。ワットが蒸気のエネルギーを発見すると火力を生み出す原材料がマキから石炭、そして石油に変化し、例えば再生可能エネルギーや深海から採掘可能な新エネルギーなど次々に進化する。また「新しい財貨の生産」は、社会からの目線の価値観ではなく、個人の尊厳を重視できる"新しいサービス提供方法の開発"であり、「原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得」は、丸ごと支援の施設福祉から"障害当事者の選択による必要十分条件を満たしたサービス"。だから従来の考え方や実施体制ではなく「新しい組織の実現」により、新たな軸を構築したサービス提供が出来るようにイノベーションしなければならない。経済学の視点だが、社会福祉は"措置から契約"の時代だから必要十分条件を満たす実施体制を構築するのと同じ。その時のミッションは"インクルージョン藤沢"。
文末、「行政の本来の仕事は、イノベーションを加速することよりも、その結果起こるさまざまな社会経済的な歪みに対処することではないか」とあった。スマホに至るまでのプロセスでも判るが、新たな世界を作り出す時は、出来ない人や分ってもついていけない人が問題とならないようにすること。それは地域福祉では充足出来ない障害者への配慮と受け止めた。例えば医療行為が必要な障害者のニーズを満たすには、行政が制度改正を図らなければ一法人で行うのは極めて厳しい。だが残念ながら、制度はいまだに長期滞在型入所施設が機軸。だから、地域福祉の時代の今も経営的には従来のままが良い。だが、社会は確実に変化し、従来の機軸に留まれば体質の古さを露呈する。だから、新機軸=イノベーションを求めて前に向かわなければならない。(2019.2)
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