ベストセラー作家恩田陸が「会社務めをしていた頃、どうしてもまっすぐ家に帰れない日というのがあった。なぜかはひとことでは言えない。とにかく、この気分のまま家に帰りたくない。今感じている空気を家に持ち帰りたくない。そう思う日があるのだ。」と書いていた。違和感なくす~っと入った。長いサラーリーマン勤務で何度もこのような気分になった。理不尽な仕事を命令された時、自分とは考えが違うが実行しなければならなかった時、ピークに達した。そんな時、酒やカラオケ、時に麻雀に興じた。仲間が察して誘ってくれた時も1人の時も。若い頃はそんな空気をもたらしたものが許せなくて感情的になった。そこで二つの課題を見た。"仕事と組織の関係"と"家に帰りたくない空気の収め方"。
はじめに"仕事と組織"。芸術系のように個人で仕事をするならともかく、組織を構成する仕事は、それぞれの想いや考え、価値観が集合して創り上げるから思い通りにならない。"組織"の意思決定が必要で、組織を無視した動きは自由で楽しげだが、意思決定が不十分なまま始動するので結集した力を生み出しにくい。だから組織としての意思決定手法を確立し実現可能な道のりを求める。多数決でも同数の場合は議長がキャスティングボードを握るように意見集約時の発言力が違う。その分リーダーは重い責任があり人知れず苦しむ。しかし、決定力の弱い人には理不尽に見え、見通しがつきにくい。だから家に帰れない空気を創る。これを職場の何気ない会話が補うが最近は少ない。利用者との距離感は十分に配慮するのにスタッフ同士、上司・部下での距離感が読めずストレスフルになる。単純化すれば分かりやすいというが、人と人との関係はそうはいかない。だから時として上司や部下、同僚とちょっとした会話で距離感を感じたい。もし、そんな空気が難しい職場ならそれを解消するのは上司の務め。何故ならそれが職場内の"居場所"作りだから。
一方で、"家に帰りたくない空気の収め方"は、そんなストレスフルな状態の解消方法。それが飲み会やカラオケ。これは時代や趣味によって異なるがすべての人に必要だから趣味に興じる時間が重要。ワーカーホリックでは激務に耐えにくい。家族を巻き込めないと思えば"家に帰りたくない日"に...。それが家族にとってありがたいかどうかは別として、何かに追い立てられるようにそんな時間を過ごす。だから利用者も安心できる最良の居場所=自室から出てストレスフルな場で過ごすのだから"家に帰りたくない日"があっても不思議ではない。彼らはどうしているの...。やり過ごす場はあるのか...。仕事帰りに縁側事業に集う知的障害の就労者がいる。これまでこのニーズを見落としていた。多くの人が求めるニーズはサービスの原石。地域支援を具体化できるかも...。これが"居場所再考"。何をどう用意すればニーズに応えられるか...。障害福祉はここまで進化していると考え"居場所最高!"と出来る未来につなげたい。(2019.3)
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