「当り前にしよう...」がノーマライゼーション。それは「ノーマライゼーションの8原理(注1)」を見れば歴然。①一日のノーマルなリズム、②一週間のノーマルなリズム、③一年間のノーマルなリズムから始まる。これすら出来ない時代があった。ノーマライゼーションの父バンク・ミケルセンが考えついた時に叫んだのは"ゲットーと同じだ!"。ゲットー=アウシュビッツ等の収容所。死の恐怖と戦ったゲットーと同じ...に驚愕。だが、ノーベル賞作家パールバックが我が子の入所先を探す体験談はそれをほうふつとさせた。
朝起きたら顔を洗うなどのリズムは疑う余地がないが、廊下に並んで顔を洗う姿は当り前か...。週末が日々と異なるのは当り前だが普段と変わらぬ日課の入所施設は当り前か...。毎日の変化が少ないのが自閉的傾向の人には分かりやすいというが、本当に365日同じリズムで良いか...。考えれば考えるほど"当り前...って、何?!"となる。だがニィリエは④~⑧まで当り前を並べる。ようやく"当り前の暮らし"が一律なはずがないと思う。すべて同じでは個性がなく誰かがコントロールする暮らしが見え隠れする。だから、ノーマライゼーションは当り前の中に"一人ひとり"という考えがある。ノーマライゼーション=ノーマルな状態は個性を大切にした暮し...。支援員の頃、土曜日に朝寝坊の中学生を起こそうとしたら"土曜日ぐらい寝かせてよ~!"と絶叫。"朝ごはん食べられないぞ~"と言うと"いらないも~ン!"。集団生活はどうしても規則優先になる。しかも命令口調に。障害福祉は入所施設から発展したから命令口調が強い傾向がある。
"路線バスに乗せろ!"と主張したバスジャック事件(注2)の横田弘氏や入浴拒否事件(注3)の新田絹子氏を思い出す。当り前が当り前になるために発言、行動した人々がいた。"当り前"のために努力した人達がいた。そして、当り前に向かって確実に推し進めて来たのが藤沢育成会。街を歩くと当り前に法人の車がある。街で当り前に声をかけてくれる利用者がいる。でも、本当に当り前か...、どこまでやれば当り前か...、何が"当り前"...。それぞれの当り前に応えるための改善はどこが終点...。法人設立運動を始めた時、親の当り前は学校に行く、家から通勤すること。それは当り前になったが、学校は分離され、行きたくても行けない、行きにくい。学校に行っているけどちょっと違う...。それが選択した結果なら良いが、そうでなければ...。だが、学校の配慮がなければ子どもが苦労...。神奈川県教育委員会は"インクルーシブ教育"を推進し、高校に知的障害児を受け入れる。それがインクルージョン...。それが良い生徒もいるだろう。でも障害は種類、程度、状態等では多様だから"当り前の多様性"が必要。一方で時代が新たな障害を生む。だから、いつまでも"当り前"にならない。だから"インクルージョン藤沢"を目指す。それが障害福祉サービスだから。それが"それぞれのマイライフ"を大切にすることだから。(2019.3)
12回にわたって「インクルージョン藤沢」について考えた。まだまだ深く広く考える要素はあるが、小休止してもう一度、街並みから社会福祉の今を考えたい。
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