以前から自室で音楽をかけ続けた。歩く時は初代アイポット。お供の音楽は若かりし頃のフォークソング、クラシックっぽい歌などなんでも良い。音楽に造詣が深い訳ではないから好きなように聞く。だから統一性はなくジャンルなど説明出来ない。"好き"とはその様なもので、理屈ではなく相性が良い程度のことのようだ。いつまでも忘れられない音楽がある一方、あっという間に消えるもの、聴こうとしなくなるもの...。それらが混在して捨てられないCDがたまっている。レコードの時代、カセットの時代、MDの時代のものもたくさんあったが、音源がなくなったことを理由に捨てた。だが、今はもったいないことをしたと思っている。
最近、ほとんど聞かなくなったCDを取り出した。昔のことだが武満徹のCDが欲しくて選んだのが「水の風景」。大体、CDなどと言うところから古いのだが、これを聞き続けている。つかみどころがない印象だが、変幻自在に形を変えて流れる"水"の正体を現しているようだ。音がふわ~っと消えるように聞こえる様子を面白がっている。武満徹は"余韻の音楽"と言われるそうだ。既に他界した武満は独学で取組み世界レベルの作曲家になった。団伊玖磨や芥川也寸志、黛敏郎などの後に出た作曲家として著名だが、わかりにくくイメージがわかないと思っていた。独学の作曲家ではゴジラのテーマ曲で著名な伊福部昭を知る人は多いようだが、武満徹は一般的ではないようだ。
余韻の音楽...。音楽は聞こえる音で表現するのに余韻は音と音の間。音が出ていない音楽。聞こえないのに聞こえるような音楽。だから、イメージが膨らむ人は面白いだろうが、イメージがわかない人には見えにくい。当初は全く音と音の間がイメージできず、ビブラフォンの美しさを聞いていた。だが、年齢を重ねたからか、心境の変化か分からないが、ビブラフォンの音と音の間の色合いが感じられ"余韻の音楽"を聞き続けている。もともと和音の美しさだけでなく、単音の美しさも好きで澄み切ったビブラフォンの余韻に浸る。楽譜に休符があると"休み"と理解するが、"余韻"を感じると音の色が違う。何かと何かがつながる時、実態でつながる時もあるが気になる程度のつながりもある。無駄に見えても、それがないと回らないものがある。多すぎても、少なすぎてもうまくいかないものもある。人の暮らしにはあってもなくてもいいようなものもある。でも、それがないと何となく充足できない...。"余韻"とはそんなつながりなのか...。そこでほこりをかぶった国語辞典を引っ張りだすと「音の後にかすかに残って続く響/事が終わった後になお残る風情や、論文などの言外の趣」と。かすかに残る何かがつながる...、そういう感じ...。日々の支援にも"余韻"があれば利用者の暮らしは大いに変わると思った。澄み切った"音"を"支援"と考えれば、支援と支援、人と人の狭間にある余韻を大切に、それぞれにフィットした支援を見つけたいものだ。(2019.7)
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