"一燈を持ちよろう!"の合い言葉と共に神奈川県内一斉に募金活動をしたことがあった。「ともしび運動」である。またたく間に広がり募金活動は活況を呈した。当時の神奈川県知事長洲一二氏が提唱した運動で寄付を集め様々な社会福祉事業が展開された。障害者の働く場として創設された喫茶店にも"ともしび"と冠し、県民であればだれもが聞いた言葉だった。それより前に全国に広まった募金活動が「赤い羽根共同募金」。社会福祉法人全国共同募金会が組織され、最近こそ集金力に陰りが見えるが、学校や町内会、企業など身近な組織に密着して安定した活動を続けている。おかげで多くの社会福祉法人が何らかの恩恵に預かっている。
中学生の頃、この"赤い羽根"のために学校ぐるみで募金活動を行い、生徒会活動の一環として放課後や日曜日に制服で街頭に立った。当時から趣旨を理解していない人もいて"いくらですか?"と聞かれることもあった。説明したうえで"おいくらでも..."と話すが"いくらなんだよ"と怒り出す人も。話し好きが募金箱の前を占拠し募金しようとしている人をさえぎることもあった。高学年になると横浜駅、伊勢佐木町商店街まで行った。中学時代のこの体験は、募金活動の趣旨を理解する場面であり、社会の人々を理解し、自分自身が社会の中で暮していることを実感するとても良い場だ。だが、最近は民生委員児童委員や老人クラブの人々がほとんどで子どもの姿を見ない。それほど寸暇を惜しんで勉強している訳でもないだろうが、求められていることが違うようで子どもが消えた。もちろんネットでも活動しているが、街頭で見かけるのは交通遺児グループ。学生中心の主体的活動。若い声が街頭に響く時、応援したくなるが、寄付金が集まりにくいのは共通課題。
一方で定着した様子の"ふるさと納税"には"返礼品"がある。次第に"返礼品"目当てが増えた。だから"返礼品"合戦が始まり、珍しいもの、付加価値があるものなど地元の商品ではないものが増えた。驚くのは7割まで返礼品の地方自治体だ。大阪府泉佐野市。笑えないのは本来の目的を逸脱しているから。そこで総務省が3割まで、地元産に限るとした。しかし泉佐野市は従わない。ふるさと納税は、育った土地で就職せず都会で働く人々が多くなり地方自治体の税収が上がらず困窮しているためにスタートした制度。住んでいる自治体への所得税納税だからこの問題が起きる。育った地域への配慮、好意がふるさと納税だ。しかし、今は見返りがないと動かない。買い物時のポイント制度も同様で店舗選びがポイントで決まる消費行動がある。プライバシーがすべて見透かされることなどお構いなし。社会福祉事業や社会問題への募金活動が低下したこととふるさと納税の過当競争から日本人の行動パターンが透けて見える。社会福祉事業も変わらなければ時代に取り残される。(2019‐⑤)
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