朝ドラ『なつぞら』が終った。年輪を重ね涙腺が緩くなり抑えるのに苦労した。主人公なつは姉たちの世代。当時は「学童疎開」があった。子どもたちを乗せた対馬丸が海の藻屑となった悲劇があった。なつは東京大空襲にあい、父は戦死、母は空襲で他界。兄と妹の3人は子どもだけで暮さざるを得なくなった。このような子が「戦災孤児」。上野の地下道などに寝泊まりする家がない子を「浮浪児」と言った。食べ物がなく盗みを働いた。国家が「浮浪児狩り」と称し収容した。日本における児童福祉(現:子ども家庭福祉)の始まり。県内でも昭和21年の県立中里学園を始め多く児童養護施設が設立された。当時は社会全体が食糧難時代、困り果てて犬肉を食べた話まで聞いた。3きょうだいは別々に育ち、大人になって再会。兄は娯楽の殿堂ムーランルージュの踊り子に育てられ、なつは知人の牧場(北海道)で育ち、妹は赤坂の置屋に拾われた。だが、これはとても幸運だ。誰からも助けられず亡くなった子、盗みで命を繋いだ人、反社会的集団に身を投じたもの...。浮浪児だった人々の回想をもとに石井光太氏が『浮浪児1945(新潮社)』で追跡している。
今は被虐待児の問題が中心だが当時は戦災孤児。この分野担当の頃アメリカから問い合わせがあった。某市の施設で育った後、差別感情から逃れてアメリカに渡り教員生活を続けた方がお礼したい...と。残念だが該当施設なしと告げるが納得されず。再調査で廃業したと判り伝えると残念がった。故郷を失った気持ちだろうと察したが如何ともしがたく連絡は絶えた。この時代は他にも子どもの悲劇があった。日本人と現地女性との子どもの戦後は差別など苦難の連続。今言うハーフは「混血児」と言われ差別対象だった。大磯のエリザベスサンダースホームは、子どもを守るため施設内学校をつくった。
中国からの帰還は深刻で過酷。私は帰国後生まれたが我が家は「引揚者」。中国や朝鮮半島等から帰国した人。中には子どもを連れ帰れなかった親が...。残された子どもは「残留孤児」。母は中国残留孤児の報道をかじりつくように視、時折涙をぬぐった。気丈な母は子どもに涙を見せなかったがこの時ばかりは抑えきれなかった。"うちは海に近かったらみんなで帰れた..."と。だが「引揚船(帰国者を乗せた船)」で大事件。足の踏み場もない船上で姉1人が行方不明に。誰もが船酔いの荒れた海。行方不明になった姉をあきらめざるを得ないと覚悟した時、迷子になった姉が顔を見せた。佐世保に着き故郷の広島まで、父はそのまま仕事で東京。家族全員が栄養失調で病院に収容された。母の涙は、姉の行方不明が陸地の出来事だったら...と重ねたのだろう。戦争が悪い。でも戦争を止められなかったのは日本人。だから"二度と起こさないで欲しい"ではなく、"起こさないために何をすべきか"考えられる人でいたい。そして、当時と現代では社会的養護の課題が決定的に違うと理解できる。それはあらゆる分野に言える。時代が変えたのではなく、そこに住み暮らす人々が関与した結果。『なつぞら』で涙腺が緩むのは仕方ない...。(2019.10)
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