保育園の"ジジババ参観日"に行った。1時間程のプログラムはメロディオンの合奏と創作。その後一緒に給食。案内に「祖父母の方を対象に、子どもたちと交流」とあった。だから創作はジジババも作れたが、見回すとババたちは一緒に楽しみジジたちは眺めるばかり。さもありなん!このために遠くは熊本、広島、長野から。こういう時代なんだと驚くばかり。ふと、保育園って...と思うのは職業病か...。
日本最初の保育園は、華族女学校附属幼稚園教師だった野口幽香と同僚の森島美根が設けた。貧民窟の子どもたちの幼児教育の場で、現在も都心にある「二葉保育園」。長崎では、岩永マキが子ども救済活動を始めた。岩永はカトリック信者で最後のキリシタン迫害を受けた。帰郷を許され荒れ果てた故郷に戻り、次代を担う子どもたちに食事を与えるなど世話をした。現在の「浦上養育院(児童養護施設)」。当時は極貧状態が多く、子どもの貧困への"善意"だった。時代がすすみ秋田の聖園短大では、農繁期の子どものケガの増加を憂い支援した。それが「季節保育所」。必要な時は農繁期だけ。あとは家族と暮らす子どもへの支援はまさに社会福祉の原点、"必要な時に、必要な人"へのサービスだ。更に"保育"という言葉。現存する「鎌倉児童ホーム(児童養護施設)」は明治時代に佐竹音二郎が創設。捨て子を育てる決心をした佐竹は"孤児とは言わせない!"と施設名を"鎌倉保育院"とし、"保育"という言葉が誕生した。法整備と共に保育園児を"保育に欠ける子"と称し、両親が働かざるを得ない家庭も対象となった。次第に拡大解釈され貧しさとは程遠い共働き家庭も対象になり、ジジババが面倒みられない訳ではないが幼児教育の場として保育園が活用される。保育系学生が保育士と幼稚園教諭の違いが判りにくいのは、時代がうつろい理解しがたい状態になったからだろう。
かつては保育園で"父母会""参観日"などを設けたら"何を考えてるんだ!面倒見れないから保育園に通わせるんじゃないか!"などと言われてしまったのだろうが、今は"父母会"や"参観日"はよく見かける。それどころか"ジジババ参観日"まであり、その"おもてなし"は至れり尽くせり。これが当り前と思わないが、当り前になりつつある...。幼児教育と保育の違いはますます判りにくくなった。時代にあらがうのではなく、時代の変化に応じるのは社会福祉では必須で、それに伴うニーズを見つけなければ時代遅れになる。だが一方で、被虐待児に保育園機能を生かして家庭に戻す努力も展開されている。ニーズは時代と共に変化する。子どもには間違いなく通う場≒保育園が生命線になっていることも忘れてはならない。かつて、保育園での子ども虐待対策について調査した時、"あの子は虐待を受けていると思う。でも通告しません。だって、風評被害が怖いじゃない!"と聞いた。時代と共に変化するのは当然だが、根底にある基本理念や思想は変わらない。現状を日本初の保育士・野口由香はどう見ているだろう...。(2019‐10②)
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