先日、高校時代の友人の墓参りに行ってきた。目黒の大鳥神社の隣にあるお寺に彼の墓がある。友人二人と行ったのだが、しばらくご無沙汰をしてしまったことを墓前で詫びた。彼との懐かしい思い出がよみがえって、まるで昨日のことのように思えた。
墓参りを終え、私が高校まで住んでいたところに行ってみようということになった。そこは世田谷区の駒沢公園のすぐ近くにあった公務員住宅であるが、すでに3階建のアパートは閉鎖され廃屋となっていた。高校の3年間を過ごした場所であるが、住宅街の中に取り残された空間でやけに物悲しかった。そういえばもう40年も経つのだな、と時の過ぎる速さを痛感した。
そこから15分ほど歩いて学校の帰りに仲間とよく集まった都立大学駅に行ってみた。授業をさぼり駅前の立ち食い蕎麦屋で50円のかけ蕎麦を食べ、喫茶店で100円のコーヒーを飲んで何時間もねばった。どんな話をしていたのか、あまり覚えていないが、私たちとってはとても楽しい時間だった。ときどき誰かお金を持っているだろうと皆が思って、店に入るのだが、誰もお金を持っていないことがあり、ジャンケンで負けた者が家にお金を取りにいくこともあった。「チャート」という名前の喫茶店であったが、ビルはそのままだったが、違う店に変わっていた。
長い間会っていないHという友人がいた。年賀状のやり取りをしていたのだが、私が何回か引越したこともあり、いつの間にか音信不通になってしまった。いつも素敵な版画の年賀状を送ってくれていた。ここからそう遠くない碑文谷にあるサレジオ教会の近くに彼の実家があったので、まだ住んでいるかなあ、と訪ねてみることにした。よく遊びに行ってレコードを聴いたり、ギター弾いたりした。泊めてもらうことも多かった。街並みはすっかり変わってしまっていたが、Hという表札がすぐに目に入った。木戸のある家だったが、今はモダンな2階建てになっていた。ここにきて、急に来られて迷惑ではないか、と思って躊躇してしまい、友人と顔を見合わせた。しかし、これを逃したらもう会えないのではないか、とおもいきってインターフォンを押してみた。女性の声で「どのようなご用件ですか?」と応答があった。「Hさんの高校時代の友人ですが、近くに来たので、突然で申し訳ありませんが、お寄りしました。」と答えると、「少しお待ち下さい。」と返事があり、ほどなくHが玄関から顔を出した。
20数年ぶりの再会であった。お互い髪はさみしくなったが、彼の人懐こい笑顔は全く変わっていなかった。不思議だが、顔をあわせた瞬間に20数年の空白は埋められ、あの頃の私たちがここにいるような気がした。リビングに通され、おいしい抹茶をたててくれた。昔と変わらぬ食にこだわりのある彼らしいなあ、と少しおかしかった。お互いの近況や友人たちのことを時間を忘れて話し、気が付くと日はすでに暮れていた。再会の約束をし、私たちは彼の家を後に家路についた。
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