障害支援区分の話しです。・・・堅い話ですが、リアルな事です。(湘南セシリア・河原雄一)

IMG_2011.JPG今年の4月から障害者総合支援法が施行されました。平成26年4月1日から、「障害程度区分」から「障害支援区分」への名称及び定義が変更されます。
日本知的障害者福祉協会(以下「福祉協会」)においては、障害支援区分に取り組む委員会として「障害支援区分のあり方の関する特別委員会」を設置しました。私は、協会会長からその委員会の取り仕切りの役を担うことになりました。障害程度区分の課題を委員会で精査し、障害支援区分のあり方についての要望事項を次のように取りまとめ、厚労省の担当課である精神保健課と数回協議を行いました。今回は、今年6月に行われた全国知的障害関係施設長等会議「障害支援区分と支給決定の方向性」特別委員会報告を中心にお伝えしたいと思います。
(1)福祉協会特別委員会要望事項
①見直しの基本的な考え方及び一次判定について
・知的障害者の障害特性及び支援の状況が反映されるように見直しを願いたい。
・現行障害程度区分判定のうち、79項目(プロセスⅠ)は障害者自立支援法施行時の旧介護保険のタイムスタディーによる樹形図を使用し判定を行っている。この判定ロジックは知的障害者の障害特性及び支援の必要性を導き出す方法としては適当でない。(知的障害者の判定で、警告コード等が多く出る現状がある。)区分の判定方法を全面的に見直していただきたい。
・プロセスⅡのB1項目群のコンピュータ判定式に問題があり、プロセスⅠで区分3以上の場合、プロセスⅡでは区分が上位へ変更されない。この判定ロジックは知的障害者の障害特性及び支援の必要性を導き出す方法としては適当でない。区分の判定方法を全面的に見直していただきたい。
②障害支援区分の調査項目について
・支援の必要性が図れるような協会版ニーズ調査-第16修正案-「新たな尺度」の検討をお願いしたい
・現行の認定項目に欠けていると思われる視点「地域生活活動、社会生活活動、特別な行動への支援」について追加するよう願いたい
・認定調査「7-ア~テ」の項目は認知症高齢者の行動を評価するものであるため、知的障害のある方の特別な行動への支援を測る項目になっていない。削除も含めた変更を願いたい。
・現行障害程度区分では、知的障害者の行動特性に適さない警告コードが多く出るので、その点も考慮願いたい
・精神障害の二軸評価の生活障害項目を医師の意見書で評価する現行の仕組みから、認定調査項目に取り入れるようお願いしたい。
③評価内容の変更
・障害支援区分と定義が変更することから、各調査項目の評価が「支援の必要性」を評価するようの検討願いたい。
④認定調査員について
・新たな障害支援区分に移行することから、認定調査員の資質向上の研修等体性の充実を願いたい。また、この点に関しては、特別委員会においても検討することから、厚労省と継続した協議を願いたい
・支援の必要性が明らかになるよう、調査員マニュアル内容の変更を検討願いたい。また、調査マニュアルの内容については、特別委員会においても検討することから、厚労省と継続した協議を願いたい。
⑤審査会について
・市町村審査会は、構成メンバー・二次判定のやり方について、諸課題がある。審査会のあり方、審査員研修・マニュアル等の検討を願いたい。また、市町村審査会のマニュアル等の内容については、特別委員会においても検討することから、厚労省と継続した協議を願いたい
⑥今後の要望
・障害支援区分の見直しに向けた協議を引き続きお願いしたい。平成25年度実施の試行調査ソフトを協会で提供できるようにお願いしたい。
(2)どこが変わる「障害支援区分」~厚生労働省資料から抜粋~
(1.名称及び定義の変更)
・「障害者等の障害の多様な特性その他心身の状態に応じて必要とされる標準的な支援の度合を総合的に示すもの。」に変更(法第4条第4項)
(2.新判定式(コンピュータ判定式)の構築)
・現行のコンピュータ判定式で使用している要介護認定と同様の判定式は使用せず、コンピュータ判定式を抜本的に見直し、新たなコンピュータ判定式では、全ての調査項目の結果をもとに判定。
・障害の特性は多種多様であり、また、個々の障害者はさらに様々な状態であるため、一部の組み合わせだけで障害の特性か、入力ミスかを判断することは困難であることから、警告コードは廃止する。
・現行の二次判定により近い一次判定が全国一律で可能になるように、コンピュータ判定式を抜本的に見直す。
・医師意見書の項目についても、コンピュータ判定式で評価できないか検討。(てんかんの有無、頻度・麻痺、関節の拘縮、褥瘡 等・精神障害の機能評価等)
(3.調査項目の追加)
・現行の調査項目では評価が難しい知的障害者及び精神障害者の特性をより反映するため、調査項目を追加。特に、発達障害の特性にも配慮できるよう、行動障害に関する調査項目を追加。
(4.調査項目の削除)
・認定調査時における障害者の負担を軽減するため、不要な調査項目等を整理。調査が重複する項目の統合及び他の調査項目や医師意見書で評価できる項目を削除する。
(5.選択肢や調査方法等の見直し
・市町村審査会の二次判定で評価している支援の内容や障害の状態等(二次判定引上げ要因)を、コンピュータ判定で評価できるように、調査項目の選択肢や調査方法等を見直す。
・できたり、出来なかったりする場合には「出来ない状況」で判断する。
・自宅等の慣れている状態や場所での「できる状況」ではなく、慣れてない状態や初めての場所での「出来ない状況」で判断する。
・障害等の状態や難病等の症状に変化がある場合は、「支援や介護が必要な状態」で判断する。

555区分.jpg

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(調査にあたっての選択肢の変更)支援の必要性に着目

 

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(6.法施行後3年目途の検討)
・「障害支援区分の認定を含めた支給決定の在り方」については、障害者総合支援法の施行後3年(障害支援区分の施行後2年)を目途に検討。※ 現行の6段階の区分、3障害共通の調査項目や判定式等については、施行後3年目途の検討の中で対応。
(3)これからに向けて
今回の変更では、障害程度区分調査の一番の問題である「旧介護保険の要介護判定式(樹形図モデル)」を抜本的に見直すことになりました。また、評価については、「支援の必要性」を主に評価のあり方も変更しました。加えて、評価の考え方に「普段慣れている場所で出来る状況でなく、慣れてない場所での状況」や、「状態に変化がある場合は、支援を多く必要とする状況での判断する」など「ある場面を想定した時の状態判断」が取り入れられました。この考え方は、2008年当時の厚労省では、考えてなかった事柄です。
この7月から全国100近くの自治体が障害支援区分の試行調査を行います。
今後、特別委員会では、行政試行調査と併せて、協会においても委員会メンバーを中心に試行調査を実施します。今後はこの調査の結果を受けて、再度、調査項目・調査員の質のあり方・調査員マニュアルのあり方・審査会のあり方などの課題を今年中に委員会で検討し、協会案として厚労省に提案する予定です。
また、折にふれて、ご報告したいと思います。


 

 

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